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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟むお父さんが持った袋の中には卵のパックがいっぱい入っていて、ちょっとうちでは見ることのない量にびっくりした。
「これ、どうしたの?こんなにいっぱいどうやって使うの?」
「あー……ケンカしたらマカロンがいいよって瀬能先生にアドバイス貰ってさ」
「それあれだよ、奥さん怒らせた旦那さんが買って帰る奴だよ」
「しかも余計怒らせることのある奴だよ」
そう言うとお父さんはショックを隠せない顔をして、オレ達の顔と買い物袋を交互に見つめる。
しょんぼりと項垂れてしまうと撫で肩がもっと撫で肩になって、親に対して思っちゃいけないのかもなんだけど、ちょっと可愛いなって思った。
朝ご飯のデザートに、昨日三人でワイワイ言いながら作ったマカロン……と、コーヒーゼリー。
そんなにいっぱい食べて胸焼けしないのかなって思うけど、銀花は朝食を平らげた後に一つ二つ三つ……数えるのが面倒になるくらい食べていた。
「食べ過ぎ良くないよ?」
「成長期だから、いいの!」
……まだ伸びる気なんだ…………
でも、羨んでばっかりでも仕方がないしなって思いながら、深い深い琥珀色のゼリーを口に運ぶと、オレ好みのほろ苦い風味が広がって、朝からご満悦だ。
「……でも、ちょっとあのコーヒーと似てるんだよね」
せっかく忘れていい気分だったのに思い出してしまって、思わず頬がぷく と膨れてしまうから、銀花が面白がってつつきに来る。
「何と似てるって?」
そう言うとテーブルにサラダボールがどんっと置かれる。オレ達に食べろって言ってるわけじゃなくて、ベジタリアンなお父さんの朝食だ。
「なんでもなーい」
「幽霊の喫茶店で出たコーヒーとだよね?」
「もーう!忘れようとしてるのにっ!」
頬を突っついてくる銀花を押しやって、怒ってみるけれど銀花はオレが本気で怒ってないってわかっているからか、へらへらと笑うだけだった。
「幽霊?」
「オ、オレの気のせいだって!昼間におばけなんか出ないよ!」
「出たからコーヒー飲んだんでしょ」
オレ達のやり取りをよそに、お父さんはサラダを食べようとした手を止めてしまう。
「もー!気にしないでよ!銀花が面白がって言ってるだけなんだって!オレの見間違いに違いないんだから!」
そう言って嫌な話題はお終いってしたくて、コーヒーゼリーを一気に頬張って立ち上がる。
「ほら、そろそろ制服着ないと遅れちゃうよ!」
「今日はネクタイ結んでね?」
「蝶々でいいじゃん」
「良くないよ!注意されるんだもん」
「練習しようよ!」
「やだー」
バタバタバタっと部屋に飛び込んで急いで制服に着替える。
いつもの通学鞄は置いておいて、今日は待ち望ん……でた海の学校の日だ!
結局薫から連絡は入らなくてシュン達の班に入れて貰うんだけど、やっぱり薫と喜蝶と三人で行きたかったなって、思っちゃうんだ。
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