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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟むまぁそれで喜蝶を投げ飛ばしちゃったんだけど……さ。
悪かったなーとは思うけど、後悔はしてない!薫を護るためだからね!
「あっ!」
薫の家に寄る途中だったんだ!
「ごちそうさまです!美味しかったです!」
「はい、お粗末様でした」
「支払いはタグでお願いします」
このつかたる市はタグだけでも生活できるんだけど、それじゃ他の街に行った時に現金の扱いに不慣れだと困るからって、使用率は半々くらいかな?
髪を耳に掛けて、左耳の耳輪につけられたピアス型のタグを見せると仙内さんが手を振った。
「今日は私のオゴリで」
「えっでもっ 」
「コーヒー気に入ってくれた?」
「はい!とてもオレ好みで美味しかったです!」
「なら、また飲んで欲しいからね」
ふふ と穏やかな笑みに押し切られて、いいのかな?って思いながら「ありがとうございます」って頭を下げる。
「えらいね」
ぽんぽんと頭を撫でられて、嬉しくなりながらもう一度お礼を言って木製のドアに手をかけた。
「またおいで」
「はーい」
最初の、会話がなくて気詰まりだなって思っていた空気が一切なくて、またおいでって言われた嬉しさにぴょこんと跳ねる。
「きちんと人通りの多い所を、気を付けて帰ってね。六華くん」
もう一度「はーい」って返事をしながら柔らかに鳴るベルを鳴らして店の外に出て……
一歩、二歩……さん…………
オレ、名前言ったっけ?
「…………」
名前だけじゃない、注文もしてない、自分がαだってことも、言ってない。
それに、最後の言葉は仁達がオレを送り出す時に使う言葉だ。
「 」
そろりと振り返った先にあるのは、ドアに貼り紙が貼られたままの人気のない暗いお店で……
風が首筋を撫でたせいか、ひやっとしたものを感じて足が止まってしまった。
体がギクシャクとしていたせいか、通り過ぎる人達が変な目で見てたのは気のせいじゃないよね⁉
絶対オレのこの動きのせいだ!
ぶるぶると体が震えるせいか今にも膝から地面に崩れてしまいそうで、一歩一歩が小鹿のようだった。
うちのマンションが見えてきて、エントランスに明かりが点いているのをみたらもう駆け込むしか考えられなくて、道が凸凹してたら絶対転んでたよって状態でマンションに駆け込んだ。
大理石の床を蹴ってガラス張りの扉が目に入った途端、ぶわっと視界が歪むのがわかって……
「ぎんかぁぁぁぁっ」
「りっかっ!」
寄り道したオレと違って真っ直ぐ家に帰った銀花はとっくに家でくつろいでいてもおかしくない時間なのに、青い顔をしてそこで待っていてくれた。
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