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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟む誤魔化すために温かいコーヒーカップを両手に持ってそろりと口をつける。
須玖里さんのコーヒーと同じものが出てくるとは思ってはいなかったんだけど、酸味が抑えられているこの味はオレの好みで、思わずぱぁっと顔が明るくなった。
須玖里さんのコーヒーも好きだったけど、どちらかと言うとオレはこっちが好きだな、美味しい美味しくないとかじゃなくて、好みの問題だけど。
嬉しくてにこにこしていると、カウンターの向こうで仙内さんもにこにこしている。
でも、ちょっと顔を真っ直ぐ見るのに勇気がいるんだよね。
「これ、気になる?」
そう言うと左目の上をちょいちょいと指さした。
否定するのも……失礼かな?でも目が行っちゃうのは確かだから、ヘタに違うって言うのも良くないかもしれない。
だから、仙内さんの左目の上の傷にちらりと視線を遣りながら小さく頷いて返した。
「これねぇ、昔番を護ろうとして負った傷」
そう言うと照れくさそうにふふ と笑うから、負い目に感じているような傷じゃないってわかってほっと胸を撫で下ろす。番ってことは、仙内さんはαなんだなーって自然とわかるのと同時に、そうやって自分が守ってあげることのできる存在がいるって言うのが心底羨ましくてしかたがない。
思わずつーんと唇が尖っていたのか、仙内さんが苦笑する。
「まぁコテンパンにやられちゃっただけの話だから、格好悪いことこの上ない話なんだけどね」
「そんなことないです!護ろうとしたことが凄いです!」
その舞台に上がることすらできないんだから、そんなオレからしたら名誉の勲章って奴だと思うし、全然格好悪くない!
「護りたいっておもうような、そんな子いる?」
「えっえー……えっと」
うたさんに始まって、保育園の頃はちーちゃんとあん先生を守りたかったし、小学生の時はしおりちゃんとたっくんとゆうくんと……中学はー……、みよちゃんと小学校の時とは違うしおりちゃんと……えっと、保健室の先生とじゅんくんと、高校に入ってからは、れいちゃんとかずくんと……あと、薫と……
「多くない?」
「えっ」
指を折りながら数えていたら更に苦笑されてしまって。
「だ、だって、好きだなって思ったら護ってあげたくなるんですもん」
「気持ちわかるよ、加護欲は私達の本能だからね」
「ですよね!」
笑うと増える目尻の皺を見ながら、「オメガが何を言ってるの」ってことを言われないことにほっと胸を撫で下ろす。
αは加護欲、
Ωは庇護欲、
って言うのはよくある話で、護ってやりたい護られたいって言うのはどうあがいても切り離せないバース性に引っ付いてくるおまけだ。
オレみたいに外見詐欺でもそこのところはちゃんと持ってて、やっぱり何かあった時は護ってあげたいってなっちゃう。
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