584 / 801
お可愛いΩ お可哀想なα
32
しおりを挟むカレー屋さんにはいろんな辛さにチャレンジできるとこもあるらしいから、ちょっと限界にチャレンジしてみたいなって思ったりもするんだけど、うちはお父さんが嫌がるから外食ってあんまりしなくて、機会がないんだよね。
「?」
ちょっと気に掛かって食堂の入り口の方に目を向けると、他の人達よりも高い位置にある頭が二個、ふらふらと疲れ切った感じで銀花に近寄って行く。
きつねうどんを食べていた銀花が嬉しそうに顔を上げるから、仁達で間違いないんだろう。
水を飲むふりをして様子を窺っていると、ネクタイをちょうちょ結びにした三人がしょんぼりと肩を寄せ合っている。
「ん────……」
予想としては、提出課題を出さずに忘れて虎徹先生に絞られたってとこかな?
あれほど毎日毎日、余裕を持ってこなしておいた方がいいよってせっついてたのに!提出直前にすればいいやとか思ってたんだろうなってとこまで考えついてしまう。
まぁいい経験。
三人でしおしおと食事をするのをこっそり見ていると、ちらちら と銀花の視線がオレの方へと動く。落ち込んでいる二人は気づかないだろうけど……双子ならではの以心伝心でなんとなく気持ちはわかる。
ありがと と。
気まずかったけど困ってたし、でもやっぱり気まずいから何も声をかけずにきつねうどんを置いてカレーライスを奪って来たんだけど、それでよかったのかなって思う。
やっぱり兄弟だから、仲良くいたいし ね。
明日から海の学校だけど、来れたら来てねって内容の手紙を持って今日も少し遠回りして家に帰る。
きっと今日も、カフェ『la fluorite』の素朴な木とガラスでできた扉には「しばらくお休みします」って貼り紙がされているんだろうなって、期待もせずにその前を通った。
一歩、二歩、
慌てて駆け戻ると、いつも張られていた貼り紙が綺麗になくなっていて、お店の中が明るい。
「えっあ っ」
扉をゆっくりと押すと、柔らかいベルの音がしてふっと気持ちが軽くなる気がする。
薫と何度か来たことのある店内は変わりなくて、カウンターの方から「いらっしゃい」と声をかけられて慌ててそちらに駆け寄ろうとした。
「どうぞ、こちらに」
にこ と笑ってオレを出迎えてくれたのは中年の男性だ……
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


組長と俺の話
性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話
え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある?
( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい
1日1話かけたらいいな〜(他人事)
面白かったら、是非コメントをお願いします!

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる