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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟む「オレだってアルファに産まれたんだから運命に会いたいし!番たいし!……オレは運命の相手にっ……相手を、幸せにしたいって思ってるよ!」
「オメガにはもう一人運命がいる、お前でなくてもいいんだから 」
「そんな話じゃないよっ!」
力いっぱいテーブルに向かって腕を振り下ろしたら、自分が思ってたよりもお皿が跳ねてしまってシチューのスプーンがけたたましい音を立てて転がって、お父さんがせっかく作ってくれたシチューが飛び散った。
幾度も飛び散ったせいで食卓はぐちゃぐちゃだ。
「あ 、の 、」
食事はいつもお父さんが作ってくれるけどそれはほとんどが作り置きで、その日に作った物を食べられるのはお父さんが帰って来た日くらいしかなくて、仕事で忙しいから帰ってくることがほとんどないからそんな食事はとても貴重で……
三人でわいわい食べたかったな とか。
いない間の話をしたいな とか。
お父さんがいない間に頑張ったことを褒めてもらいたいな とか。
思ってたのに……
「 っ」
仁と義には訳のわからないことでキレられてるし、銀花もなんか怒って部屋に入れてくれないし、お父さんとは結局こんなになっちゃって……
泣き出しそうなのをぐっと堪えたけれど、オレを見るお父さんが物凄く傷ついた顔をしていたから、目の縁に溜まった涙を見られたのかもしれない。
「 人を好きになるとかならないとか止めとこうとか、そう言うのって頭で考えることじゃないもん!自然に、惹かれて、好きになっちゃうんだから……違うの?お父さん……お父さんだって、理屈で出会って理屈で番になったわけじゃないでしょ⁉」
テーブルの上に置かれていたお父さんの拳にぐっと力が入って、絞り出すような苦々しい声が零れ落ちる。
「 ────……お父さんは、番になったことを後悔している」
その言葉は、お父さん達は運命の相手で、想い合って相思相愛で番になったと思っていたオレにはショックで……耐えたと思っていたのに涙がぽろ と零れ落ちてしまった。
自分の言葉でオレが泣くほど衝撃を受けたと言うのが、お父さん自身ショックだったのかテーブルに落ちた涙のシミを見て狼狽えていて、お互いに気まずいだけのその空間に居たくなくて「ごちそうさま!」って怒鳴るように叫んだ。
「 まだ、そんなに 食べてないじゃ 」
もごもごとはっきりとは言わず、オレを引き留めるようなことを言ってはくれたけど、お父さんもオレと話していても埒が明かないと思ったのか必死に止めようとはしない。
これ以上ここにいたら凍りついたような空気に何を言ってしまうかわからなくて、久しぶり帰って来たお父さんとこれ以上言い争いをしたくないから逃げるようにテーブルから離れた。
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