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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟むまぁそれでも家に帰らなくちゃいけないって言うのは、学生の悲しさだよね。
銀花達の制服も洗濯しなきゃだし、夕飯出してあげないとだし、お風呂沸かしたりだとか、海の学校の準備とかの確認も一緒にしてあげなきゃだし……
「うん、オレがいないと三人とも困るから仕方ないよね!」
そうやって自分で自分を励ましながら九階に上がって家のドアに手をかけたんだけど、なんだか開ける気にならなくて躊躇した瞬間、いつもは自分が開けないと開かないドアが勝手に動いた。
ギリギリ顔はぶつけなかったけれど、右手はちょっと突き指気味で思わず「ぃたーい!」って声が漏れる。
「 っ、……の ふざけんなよっ!」
右手を押さえて呻くオレの頭の上からそんな物騒な言葉が落ちてきて、むしろそう言いたいのはオレの方なのになんでそんなこと言われなきゃいけないんだって、きっと目を鋭くして声の主を見上げた。
オレよりも頭一つ以上も大きい義が、本当に……
本当に、
憎々しそうに、
「な、なに 」
顔の作り的にも性格的にも仁よりも遥かに穏やかな義の表情に、指の痛みも忘れてぽかんとしてると義の脇からさっと腕が伸びてオレのネクタイを掴み上げる。
ワンタッチタイプじゃなくて、きちんと締めるタイプのネクタイだからそんなことをされると引きずられてしまって……
爪先が浮きそうになったのをなんとか踏ん張って堪えて、朝とは比べ物にならない怒りの形相の仁に抵抗をして見せた。
「なんだよ!」
「 お前 っ 」
普段怒ることなんてない二人に睨まれて、びっくりしたけど訳もわからないままやられっぱなしになるわけにはいかない。
オレのネクタイを引っ張ったままの仁の手をぺちぺち叩いてみたり、睨みつけたりしてみたけれど見た目通りの頑丈そうな手はオレを離してはくれなさそうだった。
「卑怯者!」
「最低最悪だ!」
は?って、本当に意味がわからなくてぽかんとしてしまう。
お弁当の卵焼きを甘くしなかったのがそんなに嫌だったのかな?って、原因らしい原因はそれくらいしか思いつかなかったから、そのことかなって謝ろうとしたけどそんな剣幕じゃない。
あまりの迫力に怯みそうになった時、二人の頬が腫れているのに気が付いた。
幼い頃から武道に護身術にと色んな習い事をしている二人だから、こんな怪我を負うのは珍しかった。少なくともこの二人を殴れる人物の心当たりなんて限られてくる。
オレ達に護衛術を教えてくれた先生と、それからうちのお父さん、そして……
「お前らは 」
ひゅっと二人が息を飲む音が聞こえた。
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