OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

文字の大きさ
上 下
568 / 801
お可愛いΩ お可哀想なα

16

しおりを挟む



 まぁそれでも家に帰らなくちゃいけないって言うのは、学生の悲しさだよね。

 銀花達の制服も洗濯しなきゃだし、夕飯出してあげないとだし、お風呂沸かしたりだとか、海の学校の準備とかの確認も一緒にしてあげなきゃだし……

「うん、オレがいないと三人とも困るから仕方ないよね!」

 そうやって自分で自分を励ましながら九階に上がって家のドアに手をかけたんだけど、なんだか開ける気にならなくて躊躇した瞬間、いつもは自分が開けないと開かないドアが勝手に動いた。
 ギリギリ顔はぶつけなかったけれど、右手はちょっと突き指気味で思わず「ぃたーい!」って声が漏れる。

「 っ、……の ふざけんなよっ!」

 右手を押さえて呻くオレの頭の上からそんな物騒な言葉が落ちてきて、むしろそう言いたいのはオレの方なのになんでそんなこと言われなきゃいけないんだって、きっと目を鋭くして声の主を見上げた。

 オレよりも頭一つ以上も大きい義が、本当に……

 本当に、

 憎々しそうに、

「な、なに  」

 顔の作り的にも性格的にも仁よりも遥かに穏やかな義の表情に、指の痛みも忘れてぽかんとしてると義の脇からさっと腕が伸びてオレのネクタイを掴み上げる。
 ワンタッチタイプじゃなくて、きちんと締めるタイプのネクタイだからそんなことをされると引きずられてしまって……

 爪先が浮きそうになったのをなんとか踏ん張って堪えて、朝とは比べ物にならない怒りの形相の仁に抵抗をして見せた。

「なんだよ!」
「 お前 っ  」

 普段怒ることなんてない二人に睨まれて、びっくりしたけど訳もわからないままやられっぱなしになるわけにはいかない。
 オレのネクタイを引っ張ったままの仁の手をぺちぺち叩いてみたり、睨みつけたりしてみたけれど見た目通りの頑丈そうな手はオレを離してはくれなさそうだった。

「卑怯者!」
「最低最悪だ!」

 は?って、本当に意味がわからなくてぽかんとしてしまう。

 お弁当の卵焼きを甘くしなかったのがそんなに嫌だったのかな?って、原因らしい原因はそれくらいしか思いつかなかったから、そのことかなって謝ろうとしたけどそんな剣幕じゃない。

 あまりの迫力に怯みそうになった時、二人の頬が腫れているのに気が付いた。

 幼い頃から武道に護身術にと色んな習い事をしている二人だから、こんな怪我を負うのは珍しかった。少なくともこの二人を殴れる人物の心当たりなんて限られてくる。
 オレ達に護衛術を教えてくれた先生と、それからうちのお父さん、そして……


「お前らは  」


 ひゅっと二人が息を飲む音が聞こえた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...