OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

文字の大きさ
上 下
565 / 801
お可愛いΩ お可哀想なα

13

しおりを挟む



 けれど、たまらないほどの多幸感……
 銀花を通して感じたその感情を、あの幸せさを……

「……オレの運命にも、感じて欲しいなぁ」

 溜息を吐いて視線を下げると、箸に串刺しにされた哀れな卵焼きが寂しげに弁当の中で転がっている。
 いつもは綺麗に巻けているそれを見て、ますます重い溜息が出ることになった。


 眠い目を擦りながらフライパンを温めて……卵焼きとご飯だけは毎日出来立てを詰めたいからこうして頑張っているんだけど、今日はパスしても良かったかも。

「  ────相変わらず早いな」

 背後から聞こえた仁の声に、思わず握り潰しそうになった卵を慌てて置いて、ギクシャクと振り返って「おはよう」って言葉を返した。
 まだまだ銀花達の起きてくる時間じゃなくて油断してたせいもあるけど、やっぱり昨夜のことを思うと視線が明後日の方に動く。

「おはよ、あー……今日は俺達のも弁当作ってよ」
「また⁉︎」
「だって、おじさんのご飯、冷めても美味しいし」

 って言いながら、テーブルに広げてあるお弁当のおかずを摘まもうとするからペチンと弾いた……んだけど、この手で昨日、銀花のココやアソコやあんなトコロを触ったのかと思うと、急に気恥ずかしくなって、慌てて冷蔵庫にしがみついた。

「  っ、えっと、もっと出すから……つまみ食いはダメだよ!」

 仁の顔が見れないままにそう言って冷蔵庫の中身を探す振りをしていると、背中にとん って人の温もりが触れた。
 その温かさが誰の物なんか分かりきっているせいで、「ぅひぃ」なんて変な声が出て……

「あ、な、に、  ?」
「……おまえ  」

 どん と冷蔵庫に壁ドンされて、背中にひんやりとした感触を感じる。

「起きてただろう」
「な、な、な、なんのことっかっわかっわかっ  わか  」

 冷蔵庫との間に挟まれて身を小さくして触れていないのに、大きな熱量で覆い被さってこられると変な汗が背中を伝っていく。

「覗いてたのか?」

 いつの間に大人の声になった仁が耳元で低く唸るように確認してくる。

「銀花を見た のか」
「き 聞こえて来ただけだもんっ!」

 思わず反論したけれど、起きてたって肯定しちゃったも同然だった。

「あ、ぅ゛  だ、だってっ普通気がつくだろっ⁉︎オレもいるのわかってるのに!人ん家でナニやってんだよ!もうちょっと節度とか、慎みとか常識考えて って言うかっ!オレはっお父さんに銀花のこと頼まれてるんだよ!銀花にそんなことするんだったらもう泊めないし、近寄らせないからね!第一まだそう言うことは早  っ」

 どん! ともう一度冷蔵庫を叩かれて、驚いて勢いに乗った言葉を飲み込んでしまった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

処理中です...