564 / 801
お可愛いΩ お可哀想なα
12
しおりを挟む仁と義が泊まりに来る って言うか、仁と義の寝床はベッド脇の床に引いた布団なんだけど、ちょっと目を離したら銀花の布団に潜り込むなんてしょっちゅうあることだった。
でも、それはある程度の線引きがされているものだとばかり思っていたから……
『 ぁ』
夜中にベッドの下から抑え込むような声が聞こえてきた瞬間の、心臓の跳ね上がる感覚を思い出して慌ててぷるぷると首を振る。
「こんなとこで思い出しちゃダメだよっ 」
ここが学校じゃなくて家だったら、大きな声で歌ったりとかして気を紛らわせるんだろうけど、学校の中庭でそんなことできない!
『 ん 』
艶っぽい声と同時に駆け上がって来たぞくぞくとした感覚に、オレは銀花がどう言う状況なのか一瞬で悟って、「このバカ犬が!」って二人を怒鳴りつけてやろうと体を起こそうとして失敗した。
自分じゃ、どうにもならない、快感 がっ!
「~~~~っ」
ぐっと唇を噛み締めて、壁ドンならぬベッドドンをしてやろうかと足を上げかけた時、「六華が起きるからしーだよ」って義の声が聞こえてきてしまって、まだ目はぱっちりだよっ!って怒鳴り上げたいのに気まずさに負けて足をそろりと降ろす。
ざわ と、耳の辺りに鳥肌が立って小さくまた「 ぁ」って銀花の声が上がった。
オレは両手できつく口を押えていたからなんとか声を出さなかったけど、ぞわぞわとする感覚は消えてくれない。
「 きも、ち ぃけど、りっか が、起き 」
「大丈夫、そっとするから」
そっとするからとかじゃないっ!
声するし!
何より……
「 ィ 」
一卵性の双子の感覚がシンクロしやすいって話の御多分に漏れず、オレ達もそう だ。
小さい頃はもっと手を取るようにわかったけれど、大人になるにつれて加減を覚えて。今ではよっぽどの感情の高ぶりじゃないと繋がったりしなけれど……
「 」
「 」
「 」
小さく小声で、布団に声を押し付けるようにして何事かを囁き合っているのが分かる。
不快感はない、
あるのは、泣きたくなるほどのただただ幸福な…………
息を詰めるような気配にこちらも動けないでいると、ごそごそと動き出す布の擦れる音がする、追いかけるようにティッシュを抜き取る音とか、誰かが洗面所にこっそり行く音とかがして、その妙な生々しさにオレはますます動けなくなって、声を潜めながら幸せそうに何事かを囁き合う声を聞きながら……
まぁ我慢したわけなんだけどもっ!
「治まってよかったけど、治まらなかったらヤバかったよぉ」
どんなに外見がΩらしくても中身はお年頃のオトコノコなので、傍であんな気配を垂れ流されちゃうといろいろなとこがまずいことになっちゃうので。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる