OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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お可愛いΩ お可哀想なα

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「その子は瀬能先生の患者なので、そっちで大丈夫ですよ」

 普段の格好でも儚い感じがするのに、白い白衣なんて来ちゃうと更に儚く見えるこの人はうたさん。

 さらさらさら と流れ落ちる黒髪を耳に掛けながら「こんにちは」って声を掛けてくれた。

「でも、こっちに入れてしまうと……」
「私が付き添いますので大丈夫です」

 やんわりとした物言いなのに、言葉以外の何かを感じ取ったのか看護師さんは不承不承な感じで「わかりました」と答えて行ってしまった。看護師さんが悪い訳じゃないのに、不愉快な気分にさせちゃったかなって思ったら申し訳なくて、しょんぼりとその背中を見送っているとオレの手にひんやりとした指が絡む。

「久しぶりね!会いたかった」

 本当に嬉しそうに言ううたさんのきらきらした目に見つめられると、どうにもお年頃の男の子としては気恥ずかしくて、もじもじとして視線を外してしまった。

 華奢で、黒髪の、儚い雰囲気の彼女はー……オレの初恋相手で……

「ぼ ぼく も、会い たかった  です!」

 体温の低い手に引かれてα科の廊下を歩き出す。
 初恋の人と手を繋いで歩くとか、どんな夢のシチュエーションだよって思うけど、うたさんには子供を案内するって以外の他意はない。

「良かった!嬉しい」

 振り返って、本当に綺麗に笑ううたさんに見とれちゃうけど、でもダメダメと首を振った。

 だって、うたさんは……

「今日の夜にでも、お父さんの着替えを取りに行こうと思ってたの」
「あ の  着替え、持ってきてます」
「わっありがとう!」

 そう言って満面の笑みで笑う。

 同僚が着替えを取りに家まで来る って言うのは、よくあることなのかな?ってちょっと疑問に思いつつもあることなんだと思えるけど、でもうたさんはうちの合鍵も持っていて……
 もちろん!うたさんは勝手に入ってくるような人じゃないけど、ただの同僚に鍵なんか渡したりしないよね?ってことは、お父さんとうたさんの関係も察してしまう。

 小さい時にお父さんから紹介されて一目惚れだったんだけど、あっと言う間に失恋してしまって、苦い思い出でもあるんだよね。
 うたさんはオレの好みぴったり……って言うか、うたさんがオレの好みの元なんだろうなって思ってたりする。

「じゃあ私が預かるね」

 そう言われてしまうと、預けないのもなんだか……で。
 預けに行くのを理由にして、お父さんと久しぶりに一緒にご飯でも食べれたらなぁって下心があったりもしたんだけど、上手くいかないよね。



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