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かげらの子
落ち穂拾い的な 雪虫はなかなかの強肩
しおりを挟む「結局……雄雌蛇って何なんだったんですか?」
「さぁー?」
「さぁって……」
「調査の際に回収されたらしい骨もどっか消えたらしいし、何だったんだろうねー」
「それもですけど……祝福?でしたっけ?あるんですか?」
「それはー……一個人としての意見でいいのだとしたら、あるよ」
やけにきっぱりと言い切った言葉にしずるは引っ掛かりを覚えて、胡乱な視線を向けると「あはは」と笑い返される。
「オメガにはファンタジーな話が付いて回るからね。神がかり的な事はちょくちょく聞くけど。まぁ男なのに子供が産める段階でめちゃくちゃ不思議存在じゃない?」
「まぁ、不思議な事はちょくちょくありますよね」
ファンタジーと聞いてふと思い出した出来事に思わず頷くと、いきなり瀬能がぐりんと顔を向けてくる。
「何⁉︎ナニ⁉︎」
「え、や。不思議って言うより、勘がいいのかなって感じなんですけど、雪虫が携帯を隠すんですよ」
「どうして?」
「呼び出しの時とか」
「そりゃ電話鳴ったら出て行かなきゃだからでしょ?」
「いえ、鳴る前に です」
そう言うと瀬能は更に興味が湧いたのか、椅子を回して真正面にしずるを見据えて、さぁ!話して!と目をキラキラさせている。
「用事だけだと何もないんですけど、呼び出しの時は隠されるんです」
「へぇ!」
「…………それで、長時間とか泊りがけの呼び出しの時は……」
しずるはそう言って尻ポケットの携帯電話を取り出して瀬能の前で振って見せた。
「窓からぶん投げられます」
角が欠けて画面にヒビの入ったそれを、瀬能が興味深そうに見詰め、
「え⁉︎じゃあ雪虫は電話の内容が掛かってくる前に分かってるって事かい⁉︎」
「分かってる……のかは分からないですが、雪虫の反応で大体の内容が分かります」
「ええー!他にそんな話聞いた事があったかなぁ、オメガって言うよりは雪虫個人のって考えた方がいいのかなぁ、まぁ色素がない生き物って神がかるって言うしなぁ」
そう言うとわくわくとした顔でモニターに向き直り、忙しなく指を動かし始める。それは新しい玩具を与えられた子供のような反応で……
しずるはやらかしたのではと言う思いを拭いきれなかった。
END.
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