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かげらの子
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しおりを挟む滑らかな宇賀の肌とは全く違う刺激のあるそれが許せず、ただただ排除したくてぐぃっと鼻先で押し遣ると、喉が締まって苦しいのか宇賀がむずがるようにいやいやと首を振る。
普段ならばどうと言う事はないその動きなのに、自分自身を拒否されたような気がして捨喜太郎は藁縄を勢いに任せて鷲掴み、苦し気に呻く宇賀の項に唇を寄せた。
それがどう言った行為なのかは分からなかった、
村の男達の度胸試しを思い出したからかもしれない、
若しくは熟れたその匂いに食欲を刺激されただけだったのかもしれない……
けれど、強い匂いを放つその部位が、ただただ 欲しくて……
「 ────っ」
舌先で触れた皮膚は他のどの部分とも違い、凹凸が激しくざらりとした感触がした。
そこが赤い鱗を持った蛇の皮膚と同じだと分かっていたのになんの恐怖心も抱く事はなく、むしろその部分を噛まねばと言う妙な確信を持って捨喜太郎はゆっくりと歯を添える。
みち……と固い皮膚に歯の食い込ませるその行為が、宇賀を傷つけると分かっていたのに力を抜く事は出来なかった。
「あ゛ぁ゛ さ、き たろ 」
苦し気に名を呼ぶ声に引きずられるように、幾度目かの精を宇賀の奥へと解き放つ。
とくとくと蜜でも流し込むように繰り返し腰を揺さぶると、それを全て飲み込もうとするかのようにねっとりとした襞が動く。
宇賀が自分の全てを受け入れてくれたような満たされた気がして、捨喜太郎は体が震えるのを止める事が出来なかった。
背中に回された手がしがみつき、もっともっとと飢えた子供のように自分を欲しがる事が堪らなく幸福で、その余りの満たされた心の内の為に、捨喜太郎は自分が現実ではなく他の、肉体とは全く関係のない次元に飛ばされたのではと訝しむ程だった。
細い腕に求められる事が至福だと、何故誰も教えてくれなかったのかと怒りが湧く程だ。
宇賀と絡まり合って、求め合って、心を注ぎ合って……
互いの境目も時間も何もかもが曖昧になった頃、一条の儚い光に気が付いた。
「…………」
それが何であるか、若しくはそれが現実なのかどうかさえも曖昧で……
腕の中で達した快感に小さく震える宇賀の髪にそれが反射してやっと、外から入り込んだ月の明かりだと気が付いた。
幾度も汗に塗れながら転がったと言うのに、宇賀の黒髪は絡まる様子も見せずに流水のように滑らかに無味な畳の上に零れ落ち、それを照らす月の光は、まるで海原に落ちる陽光の様にきらきら光る。
睦事を繰り返した部屋は熱気と互いの体臭とでむっとする程熱く、夏とは言え外から入り込んでくる空気はひやりとして涼しかった。
「──── どう し ?」
碌に水分も摂らずにいたからかつい漏れた言葉は掠れていて、それを心配したのか宇賀が不安そうに瞼を上げる。
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