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かげらの子
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しおりを挟む白い肌の上に現れた、赤黒い蛇の鱗模様……
そこの部分だけ蛇と皮膚を入れ替えたかのように異質だった。
「ようさん蛇んおる山に居て、言葉も喋れん、蛇の皮まで引っ付けて……」
黒髪を引っ張られて上げられた顔は先程までの幸せそうな笑みとは程遠い淡々とした表情で、捨喜太郎は宇賀との間にあった何かを断ち切られたような気分になって息を飲む。
「……こんが、人間か?」
問い掛けに、捨喜太郎ではなく宇賀が小さく項垂れて視線を外した。
そうすると更に二人の間が遠のいてしまったようで……
「 ち、が 」
不自然な体勢で振り払う為に力を込めたせいか肩の辺りからみしりと嫌な音がしたが、捨喜太郎はそれに構わず勢いに任せて頭を振り上げた。
後頭部に、ご と鈍い音がして、その痛みは今までの人生で感じた事が無いような鋭い物だったが、それに怯まずに捨喜太郎はその勢いのまま後ろの男を突き飛ばし、宇賀の髪を鷲掴んだままの男へと組みつく。
「なっ っ、なにしょ っ」
「は ──ぁっ」
「放せ」と声を荒げようとした筈なのに声はうまく出てはくれなかった。
殴られ返されてもがむしゃらにやり返そうとして腕を振るい、何かが当たってその拍子にまた殴られ返す。
幼い頃は常に姉やか誰かが傍にいたから乱暴事など行った事がなかったし、学友には捨喜太郎と同じく殴った蹴ったには縁遠い大人しい人間ばかりだった。
殴られても避け方なんか知らなかったし受け方も分からないまま、ただ駄々っ子のように食らいつくしかできない。
「な、 放さんかいっ! ろっぽぅ、もん っ」
「やめぇ! お、ぁ 」
捨喜太郎を引きはがそうとした手が皮膚を引っ掻き、男達の力強い手が無茶苦茶に服を引っ張るせいかか細い悲鳴のように裂ける音が響いた。
懸命に伸ばした指の先に触れたのはひやりとした冷たい皮膚の感触で。捨喜太郎はそれを引き寄せようと腕を伸ばして、自身を押さえつける男を蹴り上げる。
骨に響くような鈍い感触と潰された蛙のような叫び声が上がったが、必死に宇賀を抱き締めて後ずさる捨喜太郎にはそれは聞こえなかった。
「 っ、 っ 」
荒い息の熱さに気が付いたのは、苦し気に体の各所を押さえた男達に再び取り囲まれいて、腕の中のひやりとした頼りない細い体を抱き締めて、精一杯の凄みを効かせて男達を睨みつける。
ぬるつく唇を動かすと、口の中に嫌な味が広がって思わず噎せそうになり、歯を食いしばった。
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