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かげらの子
26
しおりを挟む動かない と思っていた宇賀の体が大きく傾ぐ。
それは片方の男に乱暴に腰を引き寄せられたせいだ。
もう一人が無防備になったその尻を鷲掴んで笑っているが、宇賀の声は何も聞こえない。
振り返るその顔が、
鏡面のような瞳が、
感情もないのに名残惜しげに捨喜太郎を覗き見た。
悪漢に女性を連れ去られたらどうするだろうか?颯爽と助けに入り、その女性を救い出すのか?それとも、こっそり後をつけて隙を見て女性を逃がすのか?
悲しい事に捨喜太郎はどちらも当てはまらない。
二人の村人に小突かれ淫らに触れられながら連れていかれた宇賀を助ける為に、三人の間に飛び込んで行く事はなかった。
「 ────ぁ。 」
「早く這え!明るくなるんが早ぇからかぁちゃんもさっさと動き出すんだぁ」
「うっとこもやで、明いんは明いんで困りもんやが、いつも通りかぁちゃんには寝といてもらわんと、かなわんや」
二人は連れだって放尿する際の他愛ない雑談のように軽口を叩きながら、時折抵抗のように小さな声を漏らす宇賀の襤褸をぐいぐいと無遠慮に引っ張っている。
破れた個所もある着物がそんな男達の強い力に耐えられる筈もなくて、細やかな抵抗とばかりに宇賀が着物を押さえると、そこから ぴぃー…… と裂けた音が響く。
草むらに無理矢理引き倒されて……二人がかりで押さえつけられて……
誰がどう見ても明らかに、これから宇賀は下卑達によって輪姦されるのは確かだった。けれど、それを見ても捨喜太郎は助けに一歩足を出す事が出来ず、瘧のようにぶるぶると震えながら、蹲れば身を隠せる程の低木の茂みにしゃがみ込むのが精一杯だった。
これから何が行われるのか、分からない訳ではないのに、
自分が助けに入る事が出来ると言うのに、
滴りそうな程の汗をかいて、息を潜めて木の葉の隙間から乱暴に抱え上げられた宇賀の白い足を見る。
草の露に服が濡れるのも厭わずに、じっと息を潜めながら音を立てないように震える歯を食いしばった。
「 ぁ 」
男達の手が宇賀の体を気遣うように動く事はなかったし、思い遣りの言葉を掛ける事もない。
乱暴に引き倒されて押さえつけられて、どうしようもない時にだけ漏れる苦痛の声だけが風の音に混じって捨喜太郎の耳を打つ。
叢の深く鮮やかな翡翠のような色に、仄かにそれ自体が光っているんじゃないかと思わせる白さが浮き立ち、その中に遠慮の欠片もなく暴かれた宇賀の秘部だけが妙に艶めかしい色彩を放っている。
細い、頼りない四肢が玩具のようにもがき、自分を押さえつける腕に儚い抵抗を示す。
けれど、それだけだった。
細い体が畑仕事を生業とする男達の腕力に敵う筈もなく、あっと言う間にその赤い最奥は乱れ散らされて……
「 ぁ、あっ ぅ、 ン 」
「しっかとやち締めんと っ 」
腕が振り上げられて、自分が叩かれる訳でもないのに捨喜太郎は酷く恐怖に感じて咄嗟に目を固く瞑った。
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