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かげらの子
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しおりを挟む『持つ者』の子は『持つ者』である場合が多い。
体の丈夫さも頭の良さも、『持つ者』は他の者達よりも遥かに優れており、その血がこの村に残れば何らかの貢献が約束されるはずだった。
伊次郎は、捨喜太郎をもてなすと言う大義名分を借りて、この辺鄙で今にも消えてしまいそうな村の為に『持つ者』を取り込もうとしているのだ。
「こちらにご滞在中、どれでも気に入りましたら布団を温めておくように言いつけましょう、さっそく目につく者はおりましたか?」
酷薄な言葉に、「貴方の村人でしょう⁉村人の人権はどうなるのです?大事にしなければいけないのでは?」と声を荒げそうになったが、葉の味の消えてしまった唇をぐっと噛み締めて言葉を出さずに首を振る。
「…… きょ 今日は、疲れていますので」
「そうですか、では次の食事からは精のつく物をご用意しましょう」
いらない と返そうとした捨喜太郎の雰囲気を察したのか、伊次郎は有無を言わせないようなそんな薄ら笑いをこちらに向けて、笑っていない目で睨みつけてきた。
「…………ぉ、 お気遣い、 痛み入ります 」
幾ら体格に恵まれようとも勉学が出来ようとも、生来の気質はどうしようもない。
捨喜太郎は争い事は好まないし、陰口に言い返す胆力もなかった。
ただ穏便に、のらりくらりと躱すのが精いっぱいの男だった。
雀遣りの音で目覚めた捨喜太郎の足の包帯を留夫が甲斐甲斐しく巻き直す。油紙に泥を塗った物を見せられた時には顔を顰めそうになったが、この村では昔から捻挫には生姜を混ぜた泥を貼り付けるのだと説明を受け、捨喜太郎は渋々と頷いた。
「医者を呼ぼうにも、こんな場所ですからね。これぐらいなら私でも出来ますから」
古い包帯を持って立ち上がった留夫が眩しそうに外を眺め、自嘲気味に笑って見せる。
気の利いた返事の一つも思い浮かばず、ただ治療の礼を述べた捨喜太郎に留夫は苦笑を零した。
昨日知り合ったばかりだったが、にこにことして細かく立ち回る留夫に嫌な気はせず、捨喜太郎は碌な返しも出来ない自分を恥じるように俯く。
「本日は、如何されますか?その足では村を回るのも一苦労でしょう」
そう問い掛けられ、まさにその通りと頷き返す。
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