OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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Dog eat Dog

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 オレを見詰める瞳を見ると、満更でもないって顔のオレがいた。

 さっき見た自信のないオレじゃなくて、時宝に言って貰った言葉に浮足立って目をキラキラさせている……

「可愛い……目ぇ キラキラ  かぁわいい   かぁわ、い  」

 ぼそ と時宝の声色が低くなった。

「俺の言葉で  よ、喜んでる?」

 「可愛い」は欲しかった言葉だけれど、こんな……

「か、 はぁ、 かわいぃ  」

 こんな狂気じみたモノじゃなくて……

「も、手放さない  から   」

 急転直下で変わる時宝の感情をいなすことができないまま、オレは勢いよく抱き着かれて後ろに倒れ込んだ。
 後頭部がまたフローリングにぶつかって、小さな振動を繰り返して何度もオレを叩いて来る。まるで正気に戻れ!と言ってくれているようだと思ったのに、耳の中に流し込むように「可愛いよ」と囁かれてしまうと、もう自分を正気に戻すかどうかなんてどうでもよくなってしまった。

「かわ゛  ぃ  頭から食べたいくらい、可愛いよ?」

 それはありふれた愛の言葉なのに、どうしてだろうか?

 こいつは本気で食おうとしているような気がするのは。

「可愛い!」

 臆面もなくそう言われても、長年沁みついた曲がった考えは素直になってはくれなくて、「可愛くなんかないよ」と呻き声しか出ない。
 なのに、そんな言葉すら嬉しそうに受け取って、時宝はニコニコとオレを見下ろしている。

 この可愛い……は、オレの欲しかった可愛い なのだろうか?お世辞やおべっかなんかじゃなくて……

 そう考えると、胸の奥にすとんと時宝が当てはまったようで、

 浮き足立つような、嬉しさが……こみ上げて……

「まどかさん、俺のオメガ、とっても可愛いよ」

 くすぐるような甘い言葉で囁かれてしまうと、蜂蜜を耳に流し込まれたかのような気分になって抵抗できなかった。

「いっぱい言うからね」

 笑ってない目に微笑まれて、狂気を感じた。

 嬉しい……けど、ずっと欲しかった「可愛い」なのに、なんだか一抹のやっちまった感が拭えなくて、オレはもっとー……こう、なんて言うか普通の「可愛い」が欲しかったっ!

 

 

END.


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