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Dog eat Dog
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しおりを挟む力強く抱き締められて足がつま先立ちになって、不安定さに暴れることも叶わなくなって。
「なんで俺⁉まどかさんがそう思うから無視するんだろ⁉」
「なん なんで 」
しゃくり上げてきょとんと見上げると、困りきって雨の中でしょんぼりしている犬のような表情でこちらを見ていた。
「そりゃちゃんと働いてて、稼いで、暮らしていけてるまどかさんから見たら、俺みたいなのは認められないんだろうけど!俺ちゃんとまどかさんと釣り合うようになるから!」
ひくりと嗚咽を飲み込んで、良くわからない話に首をこてんと倒してみると、あっと言う間に時宝の顔がくしゃくしゃと歪む。
「が 」
「が?」
「がわ゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ゛」
いきなり締まった両腕に背骨がぎしりと嫌な音を立てた。嫌がらせかと思うような力の込め具合は、嫌がらせじゃない。
殺りに来てる‼︎
「可愛いぃ可愛いぃぃぃ゛っ」
「くる っじ、ぃっ 」
胴を締め付けられ、ゴリゴリと喉元に頭を擦り付けられると吐いた息をまた吸い込むことは困難で……
気道を通る空気がひぃひぃと情けない音を響かせる。
「俺絶対にビッグになるからぁっ!」
放して!と肩を叩くも受け入れてもらえず、ふぅ と気が遠くなりかけたところで腕の力が緩んだ。
体がずれて足が床に触れて、やっと人心地ついた気分で思いっきり咳き込む。時宝はそんなオレを甲斐甲斐しく膝を折ってから、背中を丁寧に丁寧に摩ってくれた。
加害者が救護してどうするんだ?
なんて考えが零れたけれど、敢えて拾い上げて脳味噌の奥にしまい込んだ。
「俺、ぜぇーったいビッグに まどかさんの横に立っても恥ずかしくない男になるからね!」
お前の…… ではなくオレの?
オレがオレ自身を恥ずかしいと思うのに、そんなオレの横なんて……
────いやいや、違う、なんかおかしい!
「お前、自分が恥ずかしいのか?」
「そ 言ってるし、まどかさんもそう思ってるでしょ?帰りを待ってただけで警察呼ばれるし、番じゃないって言うし、話は毎回途中で切れて一方的に終わらせちゃうし、挙句……ここにしか居場所のない俺に出て行けって……」
居場所云々の下りは聞いてないぞ⁉
「ごめんね、まどかさん、アルファなのに、アルファだけど……みっともなくて、全然、まどかさんが自慢できる番じゃないってのはわかってるんだけど、それでも……ね?可愛い君の匂いを他のアルファに嗅いで欲しくなかったんだ」
すっぽりと包んでしまいそうな大きな手がしっかりとオレを抱き締めて、怯えたように微かに震えながら体温を伝えてくる。
嵐のような乱暴な熱しか知らないはずなのに、時宝の体温はやけにオレの肌に馴染んで沁み渡った。
容姿を恨んで斜に構えてたことも、
性別を憎んで当たり散らしていたことも、
誰にも好まれないと悲しんでいたことも、
なんだかどうでもよくなるような、甘い体温だ。
「オレは 番なんか 」
いらない の言葉はうまく出なかった。
いらないんじゃない、欲しくても手に入らなかっただけだ。
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