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Dog eat Dog
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しおりを挟む「オレ、もう休むから」
にっちっもさっちも行かないのならば、もう自分の用事を済ませるしかない。
マイペースにはマイペースだ。
「オレは風呂に行ってくる、その間に出て行ってくれ。すぐに出てくるから鍵はかけなくていい」
「話終わってないよ!」
あーもーグダグダうるっさい。
目に力を込めて睨みつけると、流石にキャンキャンうるさかった時宝も口を閉じ、神妙な顔をしてこちらを見下ろしてくる。
そうすると少しだけ大沢の雰囲気が出て、大人っぽさのある紳士な風に見えた。
「……そりゃ、恥ずかしいか恥ずかしくないかで言われたら、情けないし恥ずかしいよ」
真正面からそう言われると、重く冷たい物を飲み込んだように内臓がどすんと衝撃を受けた気がして……
胃の辺りを守るように両拳でじっと押さえて、なんとか飲み下そうとするもうまくいかなかった。
「釣り合わないし、やだなって思うし」
もう聞きたくない と、腹に置いた拳が震える。
意味もなく瞬きを堪えたせいで、きっとそのせいで視界が滲んでしまって、余計に瞼を下ろすことが出来ない。呆れたような表情の時宝を見上げていたけれど、自分の顔を見せ続けるのが申し訳なくて俯いた。
足元に染みを作った物の正体なんか知りたくもない。
オレはただしっぺ返しを受けただけだし、時宝はただバイトだっただけだし、首のこれだってただオレの発情に中てられただけの話だ。
────ただ、選べる状況だったなら、オレは絶対に選ばれないってだけだ。
こんなキラキラしたαがオレを選んでくれるはずなんてない。
「 こんなのが番なんてって」
縮み上がった胃のせいで吐きそうだった。
「────もういい」
「ちょ、なんで⁉さっきからなんで途中で止めちゃうの⁉」
「……き、きたく、な ぃ、からだろ」
顎に指がかかって、力づくで上を向かされた。αに勝手をされるのが腹立たしいと思うのに、視線を絡められるのが嬉しくて胸が詰まる。
「聞いてよ!泣くほど嫌なの⁉」
「ぃ ぃやなのは あんたの 方だろっ 」
ジタバタと抗ってみるもびくともしなくて、腰を抱えられてしまうとますますどうにもできなくなって、繰り返し繰り返し時宝の胸に拳を振り下ろす。
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