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Dog eat Dog
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しおりを挟む「ほら!自分が勝手にやらかしましたって!あ!えーあのー……こちらとしましては、こいつの暴走を治めたのでそれでチャラにできたりとかー……ほら!お前もなんか言え!」
「 あ、の」
手が見えて、ひょこりと頭を上げた大沢の顔に思わず「ひぃ」と声が出た。
記憶にはないが、オレはそんなに酷く暴れてしまったのか、大沢の顔の半分が腫れあがっていて、左目なんかはしっかりと開いていない。足で蹴ったか物を使って殴ったか……なんにせよここまでしてしまうと、警察を呼ばれても仕方ないケガだ。
「体の 具合は……」
「い゛っ い゛い゛訳゛ね゛ぇ゛だろ゛っ」
酷い声だ。
発情期セックスした後、喘ぎすぎてΩの喉が嗄れる なんて話は、やり過ぎたら太陽が黄色く見える なんてのと同じ眉唾だと思っていたけれど、Ωの発情に中てられたαの性欲を考えると、普通のことなんだ と痛感した。
睨む気はないけれど、睨んだように見える目つきで狩とやらを睨みつけていて気付いた、このおっさんはオレが最初に被っていた帽子を落としたおっさんだ!つまり……あの時人込みで帽子を落とした時にはすでにこいつらの掌の上で踊らされていたのか?
「飲み物をお渡しして」
「は はい!」
しょんぼりと肩を落としながらペットボトルを持ってくる大沢は、叱られて落ち込む犬そのままで……ザマァみろと言う感情しか湧かない。
室温に戻されているペットボトルの水を飲み下しながら、よっぽど胡乱な目で見ていたんだろう、二人はさっと目を逸らしてこちらを見なかった。
「――じゃあ、まぁ、こう言うのは若い二人で話し合って……」
「ちょ ちょ どこまで話していいんっすか⁉︎」
「テキトーテキトー!」
へらへらっと笑ったおっさんは、そう言ってへこへこと頭をコメツキバッタのように下げながら部屋を出て行ってしまう。後に残されたのは事情のわからないオレと、大沢や中田とは……ましてやセックス中の姿とも違う、しょんぼりとした何も説明してくれない男だけだ。
「…………あつ 」
薬は切れているとは言え、湿ったシーツにぐるぐる巻にされているせいか熱くてたまらない。
オレはもぞもぞと動いてみるも……腕と足にまだ手錠の感触がある。
「 お」
大沢と呼んでいいのか中田と呼んでいいのか、掛ける名詞がわからなかったから、そこを誤魔化しながら顎をしゃくった。
「これ 外してもらえませんか」
ここまでされて、精神的にも肉体的にも逃げられる状態じゃない。
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