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Dog eat Dog
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しおりを挟む「っ、し らないって、なんで?」
荒い息の合間に聞こえた問いかけに、一瞬息を飲んだ。
知らない。
そう、知らない。
揺さぶられる気持ち良さも、
熱いモノが腹を蹂躙する快感も、
オレは、知らない。
「 ぁ゛ 、ぅ 」
ゆるり と腰の動きが止まると、腹の中にある熱の存在感と、行き場のないまま腹の中を駆ける快感だけが残されて、不満なような 満ち足りない不安感で襲われた。
やめてと言っていたはずなのに、放り出されてしまうと物足りなくて、しかもその物足りなさに怯えを感じるほど……オレはそれを渇望している。
それは今まで、欲しくても貰えなかったモノだ。
「言って、ふみさん」
「あ そ、れは っ」
言い淀むオレのナニを大沢が鷲掴み、ぎゅうっと力を込めてくる。健気に立ちあがって主張していたソコに、力を込められて痛みと恐怖で声が上ずる。
「言わないと、 使い物にならなくするよ」
この男の握力は、実際それを叶えてしまえるだけあるんだろう。玉が縮み上がるような、冷たい嫌な寒気が背筋を撫でる。
「 あ゛ ぉ゛、オレ み゛だい゛なの ────っ」
可愛らしくない顔立ちに、
目つきの悪い三白眼、
艶のない髪、
そばかすのある肌、
Ωらしさの欠片もない、雑草のような……
「ぐ ── オレみたいなの、 誰も、欲しがんない んだよ」
髪を掴んだままの大沢の腕をぺちんと叩く。
「どけよ お前だって、化粧のないオレを見たら、こんなことする気も起きなくなる 」
背後の気配は動かなくて、腹の中は苦しいままだ。
「 あんたにしたことの、謝罪は っ」
かつらを留めていたピンが勢いよく引っ張られて、絡んだ毛がぷちんと千切れる音がした。追いかけるように押さえていた毛布のような艶のない前髪が額に落ちてきて、何が起こったのかわからずに恐る恐る首を動かす。
荒い息を繰り返す、獰猛なその生き物は人でないように見えた。
「 ────っ」
糊の利いたシャツを顔に押し当てられ、外見すら偽っていたことに殺意が湧いたのか?このまま窒息させられるんだろうかと言う考えが過った途端、皮膚がもげそうな勢いで顔を擦られて声が上がる。
「ぃ っ !」
「ダメ、 ダメだ、挿れたままじゃ……出ちまう……」
譫言のように呟いて、大沢は呻きながらオレに突っ込んでいた逸物を引き抜き、荒く息を吐いた。あれだけの重量が出て行って、腹の苦しさはなくなったのに空虚感に胸が押し潰されそうだ。
ギリギリと音が鳴るほど噛み締めた後、大沢はまたゴシゴシと顔を一頻り擦り、痛いと喚き始めてやっと手を離してくれた。何がしたいのかわからなくて、怯えて後ずさると追いかけるように手が伸びて、瞼を摘み上げる。
「 ひっ」
「これも、 いらない 」
「ぃー……っ‼︎」
重ねてつけたつけ睫毛を引っ張られ、なけなしの短い自前の睫毛が抜けた気がした。
痛みに涙が滲んで、ぼろぼろと頬を濡らして……
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