398 / 801
Dog eat Dog
10
しおりを挟む思った通り、大沢がしっかりと抱き留めにきた。
「大丈夫ですか⁉」
「は はい、飲みすぎちゃったからかな ん、い たっ」
「挫きました⁉大丈夫ですか?」
赤かった顔を青くさせて動揺する大沢に、申し訳なさそうに微笑んでから体勢を立て直す。
「はい、これくらいなら……少し休めば動けますから。だから、残念ですけど今日はもうお開きですね」
「いつかさん?」
「今日はありがとうございました、大沢さんのお陰で私、前に進めそうです」
ちょっと目尻に指先を当てるようなフリをして、にっこりと笑ってやる。
「いや、いやっそんな足で何を」
「私は少し足を休めてから帰るので、もうここで」
丁寧に頭を下げた後、ひょこ と足を引きずるふりをしてやると、決心したような大沢の顔がさっと近づいて、抵抗する間もなくオレをお姫様抱っこで抱き上げた。ふわ と足が地を離れる不安感に驚いて、大沢の広い胸板にしがみつくとそれを見て大沢が柔らかい笑みを零す。
わー……なんつーか、こう、αの王道的な?
弱った生き物に見せる上からな?
あーもー。
ホント、反吐が出そう。
「きゃっ」
わざとらしく上げた小さな悲鳴を、大沢はどう思ったのだろうか?
「びっくりさせてごめんね、でもその足で歩くなんて……それに、こんな場所に一人でなんて置いていけないよ」
こんな場所……
お誂え向きな公園の前 ってか。
厚い胸板に擦り寄るようにして顔を隠し、にや と零れそうになる笑いを必死に誤魔化した。
オレの言うがままに自販機で買ってきた飲み物を、挫いてもいない足首に押し当てて、薄暗い公園のベンチの下に跪きながら大沢は不安そうにこちらを見上げている。
αがオレの前に跪いていると思うだけで、おっ勃ちそうになるのだから、我慢するのも一苦労だ。
「小さい足ですね」
なまっちろいオレの足は遠くの街灯の明かりを受けて幽霊の肌のようで、掴んでいる大沢の手の逞しさをありありと教えてくる。すっぽりと収まってしまうしまうほどの足のサイズは、男の目線からしたらコンプレックスだったけれど、この格好をするのには最適なサイズで、それを話題に出されるとなんだか微妙な気分になった。
飲み物を押さえている指先がふとした動きでふくらはぎに触れる。
「普通のサイズだと ──んっ」
「あっすみません!あの、たまたまで……」
んなわけあるか、ばーか。
ワザと当たるように動かしたんだよ。
狼狽した大沢の肩にそっと指先を置き、乾くからあんまりしたくないんだけど、じっとその瞳を覗き込んだ。
「大沢さん 私、あの 」
小さく震える演技まで完璧だ。
「いつかさん、ナンパなことをして……信じてもらえるかわかりませんが 」
そこで大沢は言葉を区切って、その続きを言おうかどうしようか、もしくはどんな言葉を言えばいいのかを考えているようだった。
「──── 運命を、感じませんか?」
はい、いっちょ上がりぃ!
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる