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花占いのゆくえ
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しおりを挟むさぁ、何度も頭の中で繰り返したセリフの出番だ。
「 ────ざまぁ これで薫は、オレのモノだよ」
声は震えなかっただろうか?
しっかりと言えただろうか?
あいつにちゃんと、聞こえただろうか?
「 ぉ お前なんかにっ!」
気配を察してか、薫の母親を押さえていた看護師達が忠尚を止めようとしたけれど、そのヤワそうな体のどこにそんな力があるのか、睨みつける視線のまま一直線にオレへと駆け寄ってきて……
「────っ!」
顎から響く衝撃と音は、さすがに鞄の金具の比じゃなかった。
冷たい白い床に倒れ込むオレに掴みかかろうとしたところで止められて、忠尚は荒い息の合間にオレに向かって叫んだ。
「首を噛んだって!薫くんは君のものになんかならないっ!」
「 」
「彼の番はっ一生、僕ひとりだっ」
血走った目が睨みつけてきて、人に殺意を向けられることの怖さに震え出しそうだった。
でもそれと同時に、忠尚が叫んだ言葉が、悔しいのに嬉しくて……
泣きそうになるのを堪えるために項垂れた。
「 そうかよ」
引きずられるように立たされて、二人から引き離すために奥へと促される。
オレの姿が遠ざかるにつれて、薫の母親の泣き声が大きくなって、それを慰める忠尚の声が聞こえた。
「 ごめんなさい 私たちがせめて卒業までって言ったからこんなことに 」
「 お母さん、 僕はちゃんと薫くんを支えて行きます、だから 」
野暮ったい、生真面目そうな、忠尚ならたぶんそう言うんじゃないかって考えていた。
思っていた通りの言葉が聞こえて、ほっと肩の力が抜けたような気がする。
「 絶対に傍を離れませんから!一生、共に歩んで行きます 」
離れるほどに言葉は聞き取りづらくなって行くけれど、オレが薫に告げた言葉を忠尚が繰り返しているのが聞こえた。
────オレが一緒に歩いて行きたいのは薫だけ
忠尚の言葉を聞いて、これで大丈夫だと心のどこかが納得して……遠くにいても薫の幸せを祈れるような、そんな愛し方でもいいと思った。
もう一度薫の笑顔を見たかったけれど、オレがそれを見ることができる機会はもうないだろう。
促されて顔を向けた先の暗い廊下が、いつもオレを見詰めてくれていた黒い瞳のようであればいいのにと願った。
END.
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