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花占いのゆくえ
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しおりを挟む「かおる 」
なんて声を掛ければいい?
授業や講習で、こう言った場合にはどう対処すればいいと習った?
「あ、 」
何も言葉が出なくて……
何かを言えば薫を傷つけてしまうんじゃないかと思うと恐ろしくて……
「だ 抱きしめさせて 、かおる、お願い────かおる?」
懇願して、敵意はないよ と腕を広げてやっと、薫はオレの手を取ってくれた。
「じゃあ、タクシーで病院に行こうか?」
「ぃ いやっ 」
やっと握れた手をまた振りほどかれて、
「かおる」
こんなに縋るように名を呼んだことがあったかな?
いつもはオレが甘える時に呼んでたけれど、今は少しでも薫に安心して欲しくて、幼い頃の調子でその名を繰り返した。
「かおる 」
「びょ いんは、いや 」
「 っ」
薫がいやだ と言うならその願いを叶えてやりたかったけれど、必要なのはケガの治療だけじゃない。
「だめ だよ。薬、……アフターピルもいるだろ ?」
その言葉を今の薫に言うのは禁忌かもしれない。
「 っ や 」
駄々っ子のように腕を振り回して逃げようとするのを力づくで押さえ込むことも出来ず、細い腕が顔に当たって鋭い痛みが走った。
唇が切れたのか、金臭い、嫌な味がする。
「 っ」
「ぁ あっ ちが、 ……っ」
オレの唇の端から流れた血を絶望でも見るような表情で見てから、くしゃくしゃと顔を歪めて薫はその場に崩れるようにして突っ伏してしまった。
小さな体は、守ってあげたくて、なのにオレは何もできなかった。
「っ 、っ そ、れでも、病院には っ」
行きたくない とくぐもった声で繰り返す。
「 ──── 病院に、行ったら し 知られちゃう 」
暴行を受けたことを?
項を、噛まれてしまったことを?
項の傷もそれ以外の傷も、誤魔化してしまえるようなものじゃない。
「そ んなこと、 」
「ぃや っ知らない人たちにっ 体 を、好き勝手されたって……忠尚さんに、知られたくないっ 嫌われちゃう!」
パタパタと涙が地面を打つ音を聞きながら、あの男の名前を呼ぶ姿を見下ろした。
「 し、られた くないっ……嫌われたくない お願いっ 」
……心が、この人だって言っているんだって、言ってたっけ?
忠尚に知られて嫌われることに怯えて震えて泣く薫を、オレはどうすれば慰めることが出来るのか……安易に「あの男はそんな奴じゃない」と言えば慰められるのか?
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