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花占いのゆくえ
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しおりを挟む「じゃあ、気持ち良かった?」
「っ!」
突き出された手がオレを突っぱねて、赤い顔を押さえてきつく目を閉じ、
「怖かっただけだから!」
そう強がった声を上げた。
ちらりとオレを見ようと瞼を開けるけれど、視線が絡むとぱっと顔を反らしてしまう。
それは、オレが嫌いだと言う意思表示の態度じゃない。
さすがにそれはオレでもわかる。
薫が運命を感じた忠尚じゃなく、オレの方を向いてもらうには、力づく……ではダメなんだ。ちょっと乱暴なくらい強引な方がΩは喜ぶ とか、無責任な情報が流れていたりもするけれど。
大事にして、
甘く蕩けさせて、
オレに惚れて貰わないといけない。
「 ──かおる」
いつものように、強請る時の口調で問いかけると、距離を取ろうとした薫はちょっとためらってから、そろりとオレの方に戻ってきてくれた。
それにほっとして、思いの真剣さを示す為にベンチから降りて膝をつく。
「 薫に、運命が現れたのはわかった。運命となら、薫が幸せになれるって言うのも良くわかる。でも、それでも、オレはもっと薫を幸せにできるから、オレが一緒に歩いて行きたいのは薫だけだし、薫以外は見えないし、薫だけにオレの子を産んで欲しい、だから 」
山の風は冷たかったはずなのに、手はぐっしょりと汗にまみれている。
「 ──── オレに項を噛ませて!番になろう!」
一世一代の、プロポーズだと思って高らかに告げたのに、
「良かった!まだいたっ!」
の言葉が重なって、濁って気まずい雰囲気が沈黙を運んできた。
校門から少し離れて緩やかに左に折れる位置にバス停があったせいか、近づくまで気づかなかったらしい。
息を荒げたミナトがカフェオレを手に固まって、「あ 」「う 」と呻いてオレ達を交互に見ている。
「あ 僕、こ これ、忘れてたからって で、たまたま 」
自分が雰囲気を壊してしまった自覚はあるようで、足元に落とされた視線はこちらを見ないし、言葉はしどろもどろだ。
青ざめたその顔がどんな謝罪を考えているのかなんてことはどうでもよかった。
オレが、薫に告げた求婚を台無しにしたミナトに、イラっとした感情が擡げる。
腹立たしくて、ミナトに感情のままに怒鳴りつけたい気持ちはあったが、薫はそれを良くは思わないんじゃないだろうかと思うと、ぐっと飲み込むしかできない。
「 ごめん」
絞り出された謝罪の言葉はそれだけだった。
年上の人間に対するように、取り繕った冷静さで忘れ物を届けてくれた礼を言おうとしたところで、さっと足元が明るくなった。
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