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花占いのゆくえ
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しおりを挟む震える手でオレにしがみついて来る姿は頼りなくて、今吹いて来る風にすら手折られてしまうんじゃないかと不安を掻き立てるには十分で……
薫に好きと言われて舞い上がってもいい筈なのに、黒い澱がまとわりついて言葉が出ない。
「……なのに、 っ っ」
薫の言おうとした言葉は、きっと「違う」だ。
冷たい何かが胸に落ちる。
見つけたんだ……と、冷たい何かに冷やされた頭の端で理解した。
薫は、見つけた。
──── 運命を!
オレを拒否する言葉を吐きたくなかったのか、薫は苦しそうに喘いで今にも過呼吸を起こしそうだ。
途切れる呼吸の合間に、繰り返し「ごめん」「ごめん」と声が零れる。
好きなのに……なのに、こっちと本能が囁いていて、がんじがらめになっているんだろう。
本能の力は強い。
ましてや薫はどこまでもΩに近い特別なβだ。
運命を呼ぶ声の魅惑さは麻薬のようだ。
それは、両親を見ていたらわかる。
「嫌だよ、嫌なんだ、喜蝶!喜蝶が他の人と仲良くするのもっ他の子に匂いをあげるのもっ!」
嫌 と悲鳴のように続く言葉が遠かった。
一瞬で冷えた体に歯がカチカチと鳴り出しそうで、泣き続ける薫を見下ろすも隔てられたように遠い感覚がする。
見てくれなくなる……
ぞっとする言葉に足元が崩れ去るようなふわふわとした衝撃に、縋れるものを見つけ出したくて薫の腕に力を籠める。
溺れる人間のように、それが細く頼りなく、いつも守ってあげないと と思っていた薫の細い腕でも構わなかった。
「 し て」
思わず口をついて出た言葉は、山の風と木の音で薫まで届くなんて思わなかったけれど、なぜだかその瞬間だけ風が凪いで、木々の音が遠のく。
『 ────今すぐ、発情して』
オレの言葉に含まれる不穏な気配に一瞬で気づいたらしい薫は、本能的な動きでその場から逃げようと身を引きかけた。逃げようとした腕を掴み直してやるだけで、薫の動きはあっさりと止まってしまう。
いや、止まったのではなく、抵抗しても無駄な状態だった。
現に逃げようとしている薫の足元ではざりざりと遠ざかろうと足が音を立てているし、全身に力を入れてオレから離れようとしているのもわかる。
でも、動かない。
αの体は生命力に溢れ、頑丈で力も強い。
そう言う風にできている。
なぜなら、他のαとΩを取り合ったり、いざと言う時はその力でΩを押さえつけなくてはいけないから。
「きちょ なに、 い、言って、 」
「今すぐ発情して、そうしたら薫の首を噛むから」
「ぁ っ」
同い年の男同士だが、オレがαである以上は腕力で薫に勝ち目はない。
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