OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

文字の大きさ
上 下
356 / 801
花占いのゆくえ

46

しおりを挟む



「  特別なのは、かおるだけだよ」

 やっぱり、ぐっと何かを飲み込む気配がする。

 なんで?
 急に、何があった?

「み ミナトさんの味方したのが悪かった?」
「   」
「だって、ミナトさんもヒートで辛いんだって思ったら 」
「   」
「それ以外はなんか成り行きって言うか、なんとなく?だから  」

 薫の背中が震えて、またぐっと言葉を飲み込む気配がした。

「かおる?オレに言いたいことがあるのなら言って?オレ薫の言葉なら何でも聞くよ?」
「  き、聞かないでしょっ⁉いつもいつもっ聞いてくれたことなんてないのにっ!」

 また拳が振り下ろされるかな?と戦々恐々していたけれど、薫も昨夜のことを覚えてくれていたのか、拳をぐっと握ってから緩く息を吐いて、オレを殴りたかったらしい衝動を抑えているようだ。
 唇を噛み締めながら、何度も出かけた言葉を飲み込む姿は、焼けた鉄の球を飲み込んでいるかのようにも見えて、薫にそんな苦行をさせてしまった原因がわからなくて眉を八の字にするしかなかった。

 最後の太陽の光が木々の間に消えて、オレ達の座り込んでいるバス停は影の中に落ち込んだように薄暗い。

「かおるのことは、いつも最優先だろ?」
「違うっ!いつもいつも‼見つけてきた『運命のオメガ』が優先で、恋人が出来たら俺なんか視界にも入ってなかったじゃないか!」
「だって、早く運命か見極めたかったから!運命を見つけて、そんなのより薫を愛してるって早く言いたかったから!」
「    っ」

 ぐっと作られた拳は今度こそオレに振り下ろされるかもしれないと覚悟を決めたけれど、薫はゆっくりと息を吐き出し、その拳を膝の上に戻してしまった。

 それは、諦めのしぐさだ。

「か ぉ」
「もう、しんどい んだった」

 震えているけれど、声はこちらがはっとする程に硬質だ。

「だから、もういい んだ」
「な、なに?なに⁉薫?何の話⁉」
「喜蝶に、こうやって振り回されるの、もうしんどい。だから、もういい。──── 俺は忠尚さんと寄り添って生きて行こうって決めたんだ」

 薫と同じ黒髪黒目の、野暮ったい眼鏡の似合う、大人の男。

「だ だめだっ!すぐに証明するから!待ってて!ね?かおる」
「だから、こうやって構うのも、もうおしまい」
「やだ、や  何言ってるの⁉」

 ぽとぽとと涙を流しながらそう宣言されて、とっさにその肩を掴んで揺さぶった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...