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花占いのゆくえ
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しおりを挟む「 特別なのは、かおるだけだよ」
やっぱり、ぐっと何かを飲み込む気配がする。
なんで?
急に、何があった?
「み ミナトさんの味方したのが悪かった?」
「 」
「だって、ミナトさんもヒートで辛いんだって思ったら 」
「 」
「それ以外はなんか成り行きって言うか、なんとなく?だから 」
薫の背中が震えて、またぐっと言葉を飲み込む気配がした。
「かおる?オレに言いたいことがあるのなら言って?オレ薫の言葉なら何でも聞くよ?」
「 き、聞かないでしょっ⁉いつもいつもっ聞いてくれたことなんてないのにっ!」
また拳が振り下ろされるかな?と戦々恐々していたけれど、薫も昨夜のことを覚えてくれていたのか、拳をぐっと握ってから緩く息を吐いて、オレを殴りたかったらしい衝動を抑えているようだ。
唇を噛み締めながら、何度も出かけた言葉を飲み込む姿は、焼けた鉄の球を飲み込んでいるかのようにも見えて、薫にそんな苦行をさせてしまった原因がわからなくて眉を八の字にするしかなかった。
最後の太陽の光が木々の間に消えて、オレ達の座り込んでいるバス停は影の中に落ち込んだように薄暗い。
「かおるのことは、いつも最優先だろ?」
「違うっ!いつもいつも‼見つけてきた『運命のオメガ』が優先で、恋人が出来たら俺なんか視界にも入ってなかったじゃないか!」
「だって、早く運命か見極めたかったから!運命を見つけて、そんなのより薫を愛してるって早く言いたかったから!」
「 っ」
ぐっと作られた拳は今度こそオレに振り下ろされるかもしれないと覚悟を決めたけれど、薫はゆっくりと息を吐き出し、その拳を膝の上に戻してしまった。
それは、諦めのしぐさだ。
「か ぉ」
「もう、しんどい んだった」
震えているけれど、声はこちらがはっとする程に硬質だ。
「だから、もういい んだ」
「な、なに?なに⁉薫?何の話⁉」
「喜蝶に、こうやって振り回されるの、もうしんどい。だから、もういい。──── 俺は忠尚さんと寄り添って生きて行こうって決めたんだ」
薫と同じ黒髪黒目の、野暮ったい眼鏡の似合う、大人の男。
「だ だめだっ!すぐに証明するから!待ってて!ね?かおる」
「だから、こうやって構うのも、もうおしまい」
「やだ、や 何言ってるの⁉」
ぽとぽとと涙を流しながらそう宣言されて、とっさにその肩を掴んで揺さぶった。
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