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花占いのゆくえ
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しおりを挟む口からつい出たあの言葉を訂正するのを忘れていたことを思い出した。
できるだけ乱暴な動きにならないようにミナトから離れて、ゆっくりと正面に見据える。
先程までオレにしがみついていたせいかミナトの顔が赤くて、人の気持ちを考えないオレにでもその表情の意味は理解できた。
「その 恋人って奴、ちょっと誤解って言うか」
「 」
「あの時、頭に血が上って、つい言っちゃっただけなんですけど」
正直にそう言うと、ミナトの体にぎゅっと力が入ったのがわかった。
「ミナトさんに誤解させちゃったなって、思って」
どんなに言葉を募っても、結局はオレが考えなしに薫を振り向かせたくて適当なことを言ったことには変わりない、それで期待させてしまったのはオレが悪い。
「 ご、かい」
その手と同じように、ぽつんと呟かれた言葉は震えていて、オレの言葉が傷つけたんだなって。
「お付き合いしてるって言っちゃったけど、恋人とかそう言う意味で言ったんじゃなくて、 」
しどろもどろと、なんとか言葉を探すけれどいい言葉が思い浮かばない。
買い物に付き合っている?
お試しに付き合っている?
どれも言い訳にするにも、ミナトを納得させるには難しそうだ。
薫の気を引きたくて と本当のことを言ってしまうのは悪手なのは、さっきの雰囲気でなんとなく察している。
言葉を選ぼうとするけれど言葉がなく、その言葉を探すけれど見つけられずで、もごもごと口ごもって視線を逸らす。
今までは運命を探す必要があったから、どんな相手でも「付き合おう」「OK」で良かったけれど、ミナトはそうじゃないだけに、困り果ててしまった。
「じゃ じゃあ、 恋人、なろ?」
どっとミナトが胸に飛び込んできた衝撃によろけたけれど、倒れるほどじゃない。
「は?」
「マッチングしたってことは、僕との相性って悪くないと思うんだ!だからっ誤解だったなら新ためて恋人になろうよ」
背中に回された腕が力強くオレを抱き締めて、オレに対して愛情を示してくれる。
育った環境のせいか、人に求められるとどうしようもなく嬉しくなって、調子に乗ってしまいそうになるのは悪い癖だと自分でも思う。
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