OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

文字の大きさ
上 下
348 / 801
花占いのゆくえ

38

しおりを挟む



 口からつい出たあの言葉を訂正するのを忘れていたことを思い出した。

 できるだけ乱暴な動きにならないようにミナトから離れて、ゆっくりと正面に見据える。
 先程までオレにしがみついていたせいかミナトの顔が赤くて、人の気持ちを考えないオレにでもその表情の意味は理解できた。

「その 恋人って奴、ちょっと誤解って言うか」
「    」
「あの時、頭に血が上って、つい言っちゃっただけなんですけど」

 正直にそう言うと、ミナトの体にぎゅっと力が入ったのがわかった。

「ミナトさんに誤解させちゃったなって、思って」

 どんなに言葉を募っても、結局はオレが考えなしに薫を振り向かせたくて適当なことを言ったことには変わりない、それで期待させてしまったのはオレが悪い。

「  ご、かい」

 その手と同じように、ぽつんと呟かれた言葉は震えていて、オレの言葉が傷つけたんだなって。

「お付き合いしてるって言っちゃったけど、恋人とかそう言う意味で言ったんじゃなくて、  」

 しどろもどろと、なんとか言葉を探すけれどいい言葉が思い浮かばない。

 買い物に付き合っている?
 お試しに付き合っている?

 どれも言い訳にするにも、ミナトを納得させるには難しそうだ。

 薫の気を引きたくて と本当のことを言ってしまうのは悪手なのは、さっきの雰囲気でなんとなく察している。
 言葉を選ぼうとするけれど言葉がなく、その言葉を探すけれど見つけられずで、もごもごと口ごもって視線を逸らす。

 今までは運命を探す必要があったから、どんな相手でも「付き合おう」「OK」で良かったけれど、ミナトはそうじゃないだけに、困り果ててしまった。

「じゃ じゃあ、  恋人、なろ?」

 どっとミナトが胸に飛び込んできた衝撃によろけたけれど、倒れるほどじゃない。

「は?」
「マッチングしたってことは、僕との相性って悪くないと思うんだ!だからっ誤解だったなら新ためて恋人になろうよ」

 背中に回された腕が力強くオレを抱き締めて、オレに対して愛情を示してくれる。
 育った環境のせいか、人に求められるとどうしようもなく嬉しくなって、調子に乗ってしまいそうになるのは悪い癖だと自分でも思う。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...