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花占いのゆくえ
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しおりを挟むむっと唇を引き結んで、こちらを見る薫は目の縁がまた赤くなって……
「 か、かおる?」
ピーマンの苦みがやけに口の中に残って、急いでミルクティーで流し込む。
「や だって 六華が口に入れるから 」
「俺が入れた時は吐き出したくせに」
「ちょ ちょ 薫⁉」
いつもと違う様子に、六華も目を白黒させてオレと薫を見ておろおろとしている。
「────っ、あ の 、ごめんっ」
二人の視線に我に返ったのかきゅっと眉を寄せて、さっと走り出して教室を出て行ってしまった。
パチパチと目を瞬かせながら六華と視線で窺い合うも、薫の態度の答えが出なくて……
「追いかけてくる」
机の上に放り出したままになっていたクッキーを六華に押し付けると、何か言い出しそうな雰囲気を六華を無視して教室を出る。
けれど、廊下の奥に目を遣っても、もうその姿を見つける事は出来なかった。
鼻がいい と言うのか、フェロモンを嗅ぎ分けることに関しては秀でていると思う。
αもΩも多いこの学校で、オレの鼻は薫の匂いだけを探り当てる事が出来るから……
邪魔っけな匂いを避けて、自分の好きな匂いの方へと歩いて行けばそれだけでいい。
昔、かくれんぼで人を探すのが得意なのはどうしてなのかと薫に不思議そうに尋ねられたこともあったけれど、ネタばらしをするとコレだ。
「 こっちか」
近づくにつれて舌先が甘い気がするのは、それだけ薫が近いから。
中庭に作られた東屋……ではなくて、そこを擦り抜けた先にある茂み。
「…………」
音を立てないようにして近づき、茂みの向こうを覗き込んでみると黒い髪が見えた。
艶のある、細い黒髪だ。
それが首に垂れるのを見ると、ゾクゾクとした妙な興奮に襲われて……昔はそれが分からずに困惑もしたけれど、今ならよくわかる、ただ欲情してただけだ。
「──── かおる」
ズルいかな?と思ったけれど、少し舌足らずな風に呼んでみると案の定、うずくまっていた薫は肩を跳ねさせてから逃げるかどうか迷って、結局諦めて項垂れた。
「かおる」
もう一度呼ぶと、怒られた子供のようにそろそろとオレを見上げてくる。
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