OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

文字の大きさ
上 下
337 / 801
花占いのゆくえ

27

しおりを挟む



 むっと唇を引き結んで、こちらを見る薫は目の縁がまた赤くなって……

「 か、かおる?」

 ピーマンの苦みがやけに口の中に残って、急いでミルクティーで流し込む。

「や だって  六華が口に入れるから 」
「俺が入れた時は吐き出したくせに」
「ちょ ちょ  薫⁉」

 いつもと違う様子に、六華も目を白黒させてオレと薫を見ておろおろとしている。

「────っ、あ の 、ごめんっ」

 二人の視線に我に返ったのかきゅっと眉を寄せて、さっと走り出して教室を出て行ってしまった。
 パチパチと目を瞬かせながら六華と視線で窺い合うも、薫の態度の答えが出なくて……

「追いかけてくる」

 机の上に放り出したままになっていたクッキーを六華に押し付けると、何か言い出しそうな雰囲気を六華を無視して教室を出る。
 けれど、廊下の奥に目を遣っても、もうその姿を見つける事は出来なかった。





 鼻がいい と言うのか、フェロモンを嗅ぎ分けることに関しては秀でていると思う。

 αもΩも多いこの学校で、オレの鼻は薫の匂いだけを探り当てる事が出来るから……

 邪魔っけな匂いを避けて、自分の好きな匂いの方へと歩いて行けばそれだけでいい。
 昔、かくれんぼで人を探すのが得意なのはどうしてなのかと薫に不思議そうに尋ねられたこともあったけれど、ネタばらしをするとコレだ。

「   こっちか」

 近づくにつれて舌先が甘い気がするのは、それだけ薫が近いから。

 中庭に作られた東屋……ではなくて、そこを擦り抜けた先にある茂み。

「…………」

 音を立てないようにして近づき、茂みの向こうを覗き込んでみると黒い髪が見えた。

 艶のある、細い黒髪だ。

 それが首に垂れるのを見ると、ゾクゾクとした妙な興奮に襲われて……昔はそれが分からずに困惑もしたけれど、今ならよくわかる、ただ欲情してただけだ。


「──── かおる」


 ズルいかな?と思ったけれど、少し舌足らずな風に呼んでみると案の定、うずくまっていた薫は肩を跳ねさせてから逃げるかどうか迷って、結局諦めて項垂れた。

「かおる」

 もう一度呼ぶと、怒られた子供のようにそろそろとオレを見上げてくる。

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...