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花占いのゆくえ
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しおりを挟む「力を持っている人間が、思うまま振るっては人を傷つけます!この今の社会は個々人の思いやりと自律で成り立っているんですから」
ぐ と言葉が詰まる。
「他人に気を付けて欲しいから自分も気を付ける、持ちつ持たれつ これが合言葉です」
オレの様子を見て立ち上がるように促し、ちんまりとした手で両手を握った。
「人間どうしても引けない 引いてはいけない かな?そんな事情もあるとは思います、でも君達アルファの持つ力をよく考えてくださいね」
握り締めた手をぽんぽん と叩いて、虎徹は中に入るようにと促す。
背を押し出されるけれど……なんだかそれが気まずくて、すぐに動き出さずにフワフワの髪の隙間に見えるつむじを見下ろした。
「 どうしても引きたくなかったら、どうしたらいいんですか?」
ぽつんと言うと、校舎に入りかけた虎徹が驚いたように目をくりくりとさせて振り返り、可愛らしく笑う。
「地の果てまで追いかけてこの手で決着をつける!」
握り締められた拳は可愛らしいサイズなのに、何やら不穏な気配を感じる。……が、虎徹は至って真面目なようでオレをまっすぐに見つめていて、
「 参考にします」
そう小さく返して歩き出した。
甘いバニラ風味のミルクティーとプレーンクッキー、それらをもそもそと食べていると六華が微妙そうな顔をしてこちらを見ている。
「え お昼それだけなの?」
目を遣ると六華の手には弁当の包みがあって、多分これから薫と昼を食うんだろう。
それだけ と言われても朝は急いでいたからコンビニにも寄れなかったし、四限が微妙に終わるのが遅かったせいで購買は全滅だった。
足りるのか足りないのかだけを言われれば足りない。
「しょうがないだろ?誰かさんが急かすからコンビニ寄れなかったんだって」
「んっ んんっごめん」
そう言うと六華はオレの顔と手の中の包みを見比べて、「んっ」と差し出してきた。
「これ食べたらいいよ」
「いらねって」
「だって……量とか栄養とか」
そんな言葉が出る辺り、六華はそう言うのに細やかに気を配ってもらえる親の元で育ったんだと思う。
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