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花占いのゆくえ
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しおりを挟むなんでこんな朝から……と思うも、うちの両親のことだ。
息子が学校に行くのに合わせて用事も済ませ、その後水入らずで二人の世界に入りたかったんだろう。オレにも迷惑だけど、相手にも迷惑だろ……これ……
「このような早い時間に申し訳ありません、私はこう言ったものです。阿川がただいま遠方におりまして、代わりに六華がしでかした件での謝罪に伺ったのですが」
受け取った名刺の肩書は社長 となっている。
わざわざ会社のトップが謝りに来るものなのかと疑問はあったが、六華が側で大人しくしているのを見ると疑う必要はないんだろう。
「ご両親は?」
この男のイメージはシミのついていないノリの利いたハンカチ かな。
玄関でそう言い、お詫びの品ですと木の箱に入ったお菓子をオレに差し出してきた。
「早く帰ろうとして、逆に乗り換えがうまくいかなくて、結局遠回りで帰ってくることになったと聞いています、せっかく来ていただいたのに不在で申し訳ありません」
そう返してみるけれど、この状況に嫌な汗が出る。
「そうでしたか、確認もせずお伺いをしてしまい、重ねて謝罪いたします」
「いえ。両親のスケジュールがずれることはよくあることなので、むしろお知らせもせずに申し訳ありません」
「では改めてご挨拶に参りますので、ご両親にそのことを伝えておいていただけますか?」
「いいえ、怪我も快方に向かっていますし、六華もきちんと謝ってくれました。ですので、もうそう言うのは結構です。親からも電話をいただいたと聞いていますし」
隣でちんまりと小さくなっている六華を見て、もう一度顔を上げる。
「親には僕の方から伝えておきます、それで、十分です」
ぱちん と目が瞬き、一瞬驚いた感情が垣間見えた。
「 そうですか、分かりました」
「この度は、わざわざありがとうございました。こちらは両親と美味しくいただきます」
そう締め括ると、さらに目がぱちぱちと瞬く。
「 あの子達も見習って欲しいものですね」
溜め息混じりの呻き声は、ただのぼやきだ。
オレが返事をする事柄ではない。
意識がオレから逸れてしまったせいか、自分の家だと言うのに酷く居心地悪い気がして、救いを求めるように六華へと視線を遣る。
「あ、じゃあ、学校行こっか」
「ああ、そうですね、それでは私はこれで失礼します」
そう隙のないお辞儀をして六華を振り返る。
「学校に送りますか?良ければ君も一緒に」
「あー……いえ、遠慮します。まだ準備も出来ていないので」
一晩野外にいたせいで髪が埃でギシギシと軋んでいるから、せめてシャワーを浴びてから行きたい。
せっかくの申し出だったけれどそう断るしかなかった。
「じゃあ、俺は喜蝶と行くよ」
そう言って手を振る六華に、何か言いたそうな顔をしてから一礼して出て行く。
ドアを開ける動作すらピシリとアイロンを当てたように折り目正しくて、几帳面な性格なんだろうなぁと推測してみる。
「一緒に行かなくて良かったのか?」
「んー……ちょっと、喜蝶と話がしたかったから」
ダメ?と言う風に上目遣いで首を傾げられて、邪険にできるほど性格は悪くない。
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