315 / 801
花占いのゆくえ
5
しおりを挟む「あーあ。なんであの時、あのお店に連れてっちゃったんだろ」
「原因、軒並みお前じゃないか」
恨みがましく睨んでやると、小動物のようにきゅっと体を縮込めて小さく「ごめん」と返してきた。
そうすると細い肩も繊細そうな作りの顔立ちも、庇護欲をそそるのだろうけれど……
「 や、でも、喜蝶があっちフラフラこっちフラフラするから悪いんだよ」
「 」
「なんで最初から薫一筋にしとかなかったのさ」
「 俺がアルファだから」
この言葉は、αとΩなら分かってくれる言葉だ。
運命と出会える確率……なんて奇跡のような物に執着してしまうのは、本能でしかない。
「さっさと噛んで、運命が現れたら?」
自分達の子供ですら、二人の間に入るのを良しとしなかった両親を見て育ったから。
「俺は大好きなあいつを傷つけるだけ傷つけて捨てることになる」
αは何人でも噛んで番になれる。
でも、Ωは生涯で一人しか番が持てない……そして、番に見捨てられたΩは他のαを受け入れることができないまま、孤独感に衰弱しながら一生を終える。
番のシステムは、Ωに優しくはできていない。
「逆を言えば、運命を見つけてもまだ薫を好きでいられたら、薫とずっと一緒に居られるんじゃないかって……」
「保険を掛けてる段階で格好悪っ!」
つーんと拗ねたような表情で言ってくるこいつに腹が立つけれど事実だ。
怖かったから。
一番大事にしたい相手を、一生続く苦しみに突き落とすかもしれないことが。
本能に逆らえない自分が……
「薫以外には毒舌だよな。 なぁ、お前は怖くないのか?どう頑張っても運命のオメガに逆らえないアルファの本能って奴」
そう尋ねると、六華は小さな肩を竦めて首をこてんと傾げて見せた。
「ごめんね、分からなくて」
その姿は、先日の無性の医者を思い出される。
フェロモンを感じることのない生活を想像してみたけれど、そんな異世界を思い浮かべる事が出来ずに諦めた。
オレは想像力はない方なんだよ。
「でもさぁ、もうちょっと優しくしてあげてよ、目の前でベタベタベタベタされて、気分悪いよ!喜蝶が悪いのに!薫は自分は空気なんだって泣いてたよ?」
「……確かに薫は空気だな」
そう言うオレにムッとした顔が向けられて、柔らかそうなほっぺたがまたまたぷうっと膨らむから、条件反射のようについそれを突いてしまう。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

組長と俺の話
性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話
え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある?
( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい
1日1話かけたらいいな〜(他人事)
面白かったら、是非コメントをお願いします!




目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる