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花占いのゆくえ
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しおりを挟む「これは 」
「あ?ああ、ほら、さっき言っただろ?ベータでも番える人が出てきているって。オメガだけじゃなくてベータからも探す事が出来るよって項目」
運命の番は、αとΩの間にだけ存在する。
先生はそうではないと言っていたけれど……
オレはその項目の上で、何度も何度もボールペンの先端を鳴らした。
このちっさい同級生の態度はでかい。
つんと唇を突き出しつつふんぞり返って……って、そうしないとオレの顔が見えないってのもあるか。小動物のようにもじもじと肩を揺らしたり、ぷうっと頬を膨らませたり、睫毛ばさばさの瞼をぱちぱちさせたり、落ち着かない態度を取ってからすっと息を吸い込む。
「 ケガさせて ご、ごめんなさい 」
消え入りそうな声でしっかり謝ってくるのは、エライと思う。
自分の非を認めて、相手に謝罪 って言うのは、簡単そうに見えて難しい。
オレにそれができるかどうか聞かれると、厳しい。
でもそれを押して六華が謝るから、オレも素直に謝罪を口にした。
「オレも、しつこくして悪かったよ」
「ん 」
このちびっこに投げられて肋骨がイカれたなんて、恥ずかしくて笑い話にもなりそうにない。実際、前の彼女にはそれで振られたし……
「でもな、あれだけは許さねぇからな」
「 薫の、マーキング?」
「オレがっどれだけ気ぃ使いながらっ気付かれねぇようにマーキングしてたと思ってるんだ!!」
「知らないよそんなの。俺わかんないし」
「分かんないしじゃねぇよ!おかげで っ」
ぐっと泣きそうになって言葉を区切れば、同じ振られた者同士で思うところがあったのか、六華もぐっと言葉を飲んで涙ぐんだ。
「 漁夫の利ってこう言うことかぁ……」
ふぅ と肩を落とす六華に倣ってオレも肩を落とした。
α性の自覚と、薫の体の特殊性について知ってからこちら、どれだけ苦心して気づかれないようにマーキングをし続けたことか。
「オレのマーキングのお陰であいつは今まで無事だったんだ!なのに……」
線の細い肩や、サラサラの黒髪、無垢な黒い瞳を思い出す。
無防備な、人を疑うことを知らない、周りがどう言う目で自分を見ているかなんて何も考えてない……
何より、あの甘い匂いが……
くらくらするほどいい匂いが、人を惹きつけているんだと分かっていない。
「でも勝手にマーキングするのはセクハラ」
「うるっせぇよ、この詐欺オメガ!」
「詐欺じゃないよ!言葉が足りないのは嘘じゃないもん」
ぷくーと頬を膨らまして抗議してくるが、こいつはそんな可愛らしいタマじゃない。
「詐欺だろ」
「詐欺じゃない!」
丸く膨らんだ頬を突いてやると、ぷしゅっと空気が抜けて、つんと不満げに尖ったままの唇が残った。
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