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花占いのゆくえ
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しおりを挟むα用抑制剤の使用期限が迫っているのに気が付いたのは、肋骨にヒビを入れられた挙句長年想っていた幼馴染を掻っ攫われて家で腐っている時だった。
定期的なαフェロモンのチェックとα用抑制剤の更新は市民の義務だ。
メンドクサイ……とは思うけれど、これでもしΩを襲ってしまおうものならただの犯罪者で。お互いがお互いに加害者や被害者にならないように気を付けるのは社会生活の基本中の基本のマナーだと思う。
いろいろ検査に回って、最後に医者の問診の際に何か質問はあるかと問われて、ついぽろりと言葉が零れた。
「 運命の番って、なんですか?」
惹かれ合う とか、離れられない とか、聞きはするけれど、それが一体どう言う状態なのかよくわからないことに気がついた。
どんなものか は、身を持って良くわかっている。
ただ、自分達の子供ですら二人の間を邪魔するものでしかないと思えるほど、想える相手とはなんなのか……
どうして惹かれるのか、
なぜ運命なのか、
そして、どうしてそんなもののせいで……薫を諦めなければならなかったのか。
「うーん?バース医の立場から言わせてもらうと。自分とかけ離れた遺伝子タイプを持つ人間を効率良く見つけて確実に子孫を残すためのシステム、だね」
思っていたよりも固い返事が返ってきてびっくりした。
もっとふわーっとした、運命とか絆とかキラキラした甘そうなセリフが出るんじゃないかと思い込んでいた。
「え 」
「ロマンティックに言うと、自分の欠けた半分を補ってくれる魂の片割れ、アンドロギュノスの悲劇。赤い糸のその先。それから 」
戸惑いが分かったのか、医者はくすくすと笑った。
「遺伝子の補完がー フェロモンがー って、言おうと思えばできるんだけど、そうだなぁ知人の言葉を借りるなら『問答無用で人生の最優先事項になるかけがえのない人』と思ったらそうじゃないかな?」
かけがえのない……
「い いい匂いのする相手ってだけじゃないんですか?」
「そりゃするよ、相性がいいからね。でもそれだけじゃない らしい。ごめんね、そこは僕にはうまく説明できないのだけれど」
そうか……バース医は無性じゃないとなれないと聞いたことがある。
「なんと言うか、呼び合う らしいよ」
「呼び合う ですか?」
「うん、求め合うらしい」
「……じゃあ、どうしてアルファとオメガの間だけにあるんですか?」
「 それねぇ」
医者はペンの尻でとんとんと机を叩く。
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