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青い正しい夢を見る
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しおりを挟む僕、ではなく『オメガ』が必要。
その事は僕の心の何かをごっそりと奪ってしまったようで、僕を置いて行くのが当然とばかりの父の背中を見ても、逃げようと思えば逃げれそうな開かれた門を見ても、救いを求めたり門から飛び出そうなんて気持ちが全く湧かなかった。
まだ学生の子供をいきなり番にするからと連れてくるなんて明らかに常軌を逸している。
それを行ってしまえる狂気に、声高に異を唱えて騒ぎ立てるには僕自身は幼すぎて、その狂った行為にただ震えて身を守るしか術がなかった。
『では損失額分の融資は振り込んでおきます』
『助かります、これで会社はなんとかなります』
あの老人達と同じ目で僕を見つめてくる息子夫婦が現れて、僕が暴れなくなって気が緩んだのか話の聞こえる位置で父達はそんな会話をしていた。
詳しい話は分からない。
けれど、はっきり分かったのは僕が売られてきたと言う事で……
気力が、凪いでしまった……
父が、それが約束だったとでも言う当然の態度で僕を置いて帰った後、古臭く昔ながらの重苦しい閉塞感のある病院に連れて来られて、検診を受けるようにと肩を小突かれた。
忙しいのに手間だ と奥様は不機嫌極まりない態度で、ここへ来るまでに何度も足を踏まれたし、肘を抓られた。
「病気を持ってないか、中古かどうかしっかり確認してもらいなさい」
「ちゅ ?」
「別の種なんか咥え込まれてたら堪んないわ」
ざわ と嫌悪感が喉を迫上がり、吐きそうになったのをぐっと堪えた。
この人は、僕が男と関係を持ったと言いたいのか?
今日会ったばかりの赤の他人にそうまで言ってしまえる根性の汚さが信じられなかったし、僕自身が誰にでも手を出すように思われているのが心外で、思わず反論の言葉が口を突いた。
「僕は今までお付き合いらしいお付き合いもした事がないです!それでも不満だと言うのなら、こんな事せずに追い出せば っ」
乾いたパシン と小気味よい音ではなかった。
鈍く湿ったような、骨に響くような音がして僕は待合室の椅子へと倒れ込んだ。頬を殴られたものよりも大きい音がして、奥に座っていた老人が、目を白黒させては僕と奥様とを交互に見、「看護婦さん!」と大きな掠れた声でカウンターの向こうに声を掛ける。
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