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青い正しい夢を見る
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しおりを挟む家を飛び出してみたらと考えるも手元にある金額はたかが知れていて、こんな金額じゃ明日には路頭に迷う事は決定だった。
この金を電車賃にして、親類を頼れないだろうかと思ってはみるも、父の機嫌を取っておきたい親戚達の顔が浮かぶばかりで助けてくれそうな大人を思い浮かべる事が出来ない。
担任 も、どうだろうか?
新任の小さな女性教諭では、父に怒鳴り散らされてしまうと庇いきってはくれなくなるだろう。
一つ一つ、希望を見つけては消す作業を繰り返して、眠れない夜を過ごした。
リビングに降りて行くと、年の離れた弟が声を上げてご機嫌そうだった。
まだ生まれて間もない弟は、義母の忌々しそうな表情など見ずに僕に懐いて慕ってくれる。
青いロンパースに点々と白い米粒をつけて、楽しそうに食事をしているのを見て思わず頬が緩んだ。
「起きてきたのか」
「 っはい、おはようございます」
ソファーに目を遣ると、そこで静かに新聞を読んでいた父が顔を上げ、昨日の申し訳なさそうな表情を一欠けらも残さずに、鷹揚にこちらを向いた。
義母好みの白い家具の溢れる明るいリビングのはずなのに、父の周りだけ落ち窪んだかのように空気が暗い。
「なら準備をしなさい。向こうのお宅にご挨拶に行く。向こうは一日でも早く来て欲しいそうだ、都合が合うようならそのまま向こうに残りなさい」
起伏のない単調な言葉に被せるように弟の好調子な声が遠くから響く。
雰囲気を裂くような場違いな笑い声に後押しされて、産まれて初めて反抗らしい反抗を口にした。
「 っお父さん!僕やっぱり結婚なんて出来ないです!せめて高校を出て、お付き合いからじゃ駄目なんですか?」
「駄目だからすまないと言っている」
近づいて見た父の顔色は悪く、病人だろうかと不安になる程の土気色の肌だった。
「 でも、出て行きたく 」
「あの子はアルファの可能性がある」
父の視線を辿らなくても、その先がどこに向かうかは分かっている。
父がαである以上、弟もαである確率は十分にある。けれどそれが何だ ?と疑問を抱えた顔をしていたのか、父は深く溜め息を吐いた。
「アルファのいる家にオメガを置いておく事はできん」
「え と、それは、僕が弟に襲い掛かるって?」
「あ、いや、お前が襲い掛からなくとも、オメガに誑かされたらアルファの理性なんてあってないようなものだから……」
「だからって!僕はそんなタブーを 」
「お義母さんも不安がっててな」
ぎゅっと胸が苦しくなった。
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