OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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教えて!先生っ

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 言葉を心中で繰り返すと、ざわざわとした不気味なものに足を掴まれているんじゃないかって感じの悪寒が走った。

「  っ お前らっ学校で何習ってんだ!」

 αが出せる誘引フェロモン……別名は、レイプフェロモン だ。

 ぐっと息を詰めた二人は、やはり視線をちらりと合わせてから俯いてしまう。

「だって  せんせーすごくいい匂いさせたまま酔っぱらっちゃうから」
「あのまま放っておいたら、他のアルファの臭いがつくかもって」
「めちゃくちゃあせって」
「何とかしなきゃって」

 だからと言って、発情期のΩにαがソレを使うのは禁じ手で、学校の授業でも切々と言い聞かせている事だった。

「な  だからって   」

 問答無用でΩを性的に誘うソレに発情期のΩの反応はすこぶる敏感で、そこにΩ本人の意志はないと言ってもいいほどだ。
 正体をなくしてαのなすが儘になるために、合意の間柄でしか使わないと言うのは社会のマナーであり、面識のない相手にするべきではないことで……

 揮発の早いフェロモンが使用された証明は難しい、なのに容易に犯罪に発展する原因を作る誘引フェロモン。

 ソレを使った と?

「じゃあ  オレの記憶が飛んでるのも  」

 気持ち良かった と、嬉しいと思ったのも……?

 二人が傍にいてくれたらほっと安心できたのも⁉︎

「待て……それを使ったって言うなら……全部話が変わってくるぞ  っ」

 思いの他低い声が出たせいか、双子はひくりと震えて肩をすぼめてしまった。

「オレがお前らを『口説いた』んじゃない、オレがお前らを『口説かされた』んだ」

 この二人のフェロモンに踊らされて、普段なら絶対にありえない、二人相手の性行為に嬉々としてついて行った と?

 その結果、頸まで噛まれた と?

「それで今は、噛まれたからってお前らを受け入れようとしてる!」 

 勢いよく振り下ろした腕が傍らのテレビ台のガラスを叩くと、耳を塞ぎたくなるようなガラスの割れる音がして、右手の甲に熱い感触が伝う。

 赤いソレに、目が回りそうだ。

「血がっ!」
「救急車呼ぶ!」
「タオル!傷口押さえないとっ」
「俺の鞄に入ってる!」

「うるさいっ!黙れ!」

 オレの血を見て取り乱す二人に見せつけるように、わざと手を振って血を振り払う。
 赤い小さな雫が頬に飛んだのが凰珀で、青い顔をしているのが出鳳だ。
 

 それを見て、ざまぁ と思ってしまうと、オレはただの意地の悪い大人なんだろう。
 

 こんな時でも二人の違いが分かって、どちらがどちらなのかはっきりわかる。
 それを嬉しいと感じていたのに……

「お前らは  そんなにまでして、セックスがしたかったのかっ⁉」
「「違うよ!」」

 二人が睨み返してくる剣幕に飲まれそうなのを、ケガをした手をぐっと握り締めて堪え、マウントを取り戻すように足を一歩前に出した。
 そうすると怯んだのか、はっと目に怯えが走り視線が逃げる。

 そんな姿に怒鳴り上げたい気持ちも沸いたが、それよりも、二人のしたことに心がついて行かなくて……

「   さすがに 人を操って、性行為に持ち込むのは看過できない」

 はっきり言い返すと、二人は気迫に飲まれたのか俯いて口を閉ざしてしまい。

「違うよ、俺たちは……せんせーにこっちを見て欲しくて……」
「視界に入りたくて、ほんの一瞬だけ使ったんだ」

 一瞬でも、使ったことは使ったことに違いはない。

 誘引フェロモンは証拠も残りにくいし、Ω自身が自分から抱かれに行っているように見える為、事件としての立件が困難で……その悪質な性質から使用者に厳しい罰則を与えるべきだと世間が繰り返し騒いでいることだった。



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