OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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教えて!先生っ

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 オレは、結婚願望がなくて、

 番が欲しいとも思わなくて、

 気ままに生きていけたらと、


 気持ちいいことは好きだし、ヤリたい時もあるけど、右手で十分事足りる話だし、安定職だから将来の心配もしていなかった。

 首についた傷で、それが崩れるなんて思いもしない生活だったのに……


 腕に刺された針から血が吸われて採血管へと移るのを見ながら、じわじわと不安が押し寄せてきたのか、看護師が気分はどうかと尋ねてくるほどだった。


 アフターピルとは言え、一服盛られたかもしれない自分にはなんだか口に入れるのが躊躇われて、掌の薬と紙コップの水を交互に見つめるも飲む勇気が湧かなくて肩を落とす。

 飲んで、終わり。

 なのに飲めないのはどうしてなんだろう?

「どんな様子ですかー?」
「あ、すみません、 まだ。   薬飲むの苦手で」
「大丈夫ですよ、落ち着いて飲んでくださいね」

 何度か看護師に促されてやっと飲み込む事が出来た時には、紙コップの中の水はオレの体温を移してぬるんでしまっていた。


「 ────そうですね、薬物等は出ませんでした。ただ、時間が経っていますから……」

 きゅ と寄せられた眉に釣られて、こちらも眉間に皺ができるのがわかる。

「あの、タグで……相手を探すことは……」

 犯罪取り締まり番組か何かで聞いたことがあった。

 つかたる市のように市民がタグを付けている都市では、被害者のそれを辿って監視カメラで犯人を見つけることができる と。

 耳の上部に付けられた小さなピアス型のタグに触れ、縋るような思いで瀬能を見るが、緩く首を振り返された。

「  犯罪性がないのなら、個人情報の事もあるので難しいです。それに市民ならばタグも付けているでしょうが……」

 すべてのαがつかたる市に住んでいるわけではない。

「じゃあ  もし、噛んだのがアルファじゃないとか言う希望は……」

 噛むだけならバース性は関係ない筈だ。

 「ごっこ遊び」で噛む話も聞く。

 最後の希望的に半笑いで尋ねてみたが、医者の表情は難しいままだ。トントン とボールペンで机を叩き、数秒の沈黙の後にこちらを向いた。

「ご自身で分かっているんじゃないんですか?自分を噛んだのがアルファだと」
「    」

 それは、きっと、αとΩの間にある引き合う何かなんだと思う。

 本能 と、呼んでしまえば簡単だけれどしっくりと来てしまうのは、酒に酔った頭でもはっきりとわかった陽だまりのようないい匂いがしたからだ。

 柔らかで、
 包まれて、
 安堵できて、

 微睡みたくなるようないい匂い。

 離したくないと思わせる、あれはαの匂いだった。

「アルファの歯は他よりも少し薄いので、傷口を確認してみましょうか?」

 思い出した匂いに思考が引き摺られて黙り込んでしまったのを、納得できていないと思われたのか……

「消毒もしておこうか」

 そう言って瀬能は椅子をオレの方へと寄せてから、ピンセットで綿を掴んだ。

 至近距離に来た瀬能からは大人の男らしい控えめな匂いがして、悪くない匂いだったけれど、フェロモンの匂いじゃないことはすぐわかった。



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