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教えて!先生っ
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しおりを挟む「どうぞ、お入り下さい」
名前を呼ばないのも配慮かもしれないと思いつつ診察室に入ると、前回診て貰ったおじいちゃん先生を指名したのになぜかイケメンの青年が椅子に座っている。
黒い椅子に座って、ゆったりと背を預けている姿はどこかのドラマのようだった。
「はれ? あの、オレ 瀬能先生を……」
と、言いつつ白衣の胸元を見てみると、ペンが何本も刺さった胸ポケットの名札には『瀬能』と書かれている。
黒髪で、紅顔の美少年……は苦しいけれど、美青年はオレの視線に気づいてにっこりと笑う。
「びっくりした?僕ね、とうとう若返りの方法見つけちゃったんだよね」
と、確かに笑い方はあのおじいちゃん先生そのものだ。
髪を黒く染め直したとか、化粧をしたとかじゃない。完璧に若返ってる と、言うか完全に同名の他人だよね、この人。
「えっと……?」
「まぁまぁ。和んだところでお話を」
全然和んだ気分ではないのだけれど、そんなことを言ってはいられない。
事は急を要する。
発情時のΩ用のアフターピルの最大目安時間は12時間だ。
女性用の最大時間が72時間なので、それから比べたら驚くほど時間がない!なのに女性用は薬局でも入手可能だと言うのに、Ω用は処方を待たなくてはいけないと言う枷もある。
もし、だ。
もしかしたら、新しい命を授かっていたら……
「アフターピルの処方だったね。避妊を忘れるって、ヒート中だった?」
「はい……多分」
「多分?」
パソコンを打つ手を止めて、瀬能が首を傾げてこちらを見た。
「抑制剤が中途半端だったみたいで、終わったのか終わってなかったのか……」
「あー……そうね、嘔吐下痢だったって書いてあるね」
過去のカルテに目を通し、瀬能はそう言ってから「あっ」と口に手を当てた。
「書いた記憶があるよ」
「言い直さなくても別人だってわかってますよぉ……」
何がしたいんだろう、この人?
「あ、そう?じゃあややこしくないようにこうしておこうか」
そう言うと瀬能は胸ポケットに入っていた太めのペンを取り出して『瀬能』の名前の後ろに(新)と書いた。
「祖父の方には(旧)って書いておくね」
孫か!
そして(旧)とかっ孫容赦なし!
「 で、お相手は恋人でいい?」
そこを聞かれて言葉がぐっと詰まる。
恋人 でないのはー……確か。
「 いえ」
歯切れ悪く言ったオレの言葉ですべてを察したようだった。
「あっけらかんとしてたから恋人とかと思ったけど……触診する?怪我や痛みとかは?」
「あ いえ、そんなのはないです」
「肛門の具合を見れば乱暴されたかどうか分かるけど?場合によっちゃ証拠としてちゃんと使える物だから 」
瀬能の言葉の内容が、だんだんレイプ被害者に対する物になりかけていて、オレは慌てて首を振って言葉を止めた。
「傷 とかもなくて、その すごく気持ちよかったので……」
オレの言葉に顔を険しくして、瀬能は指で首を示してくる。
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