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教えて!先生っ
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しおりを挟むぐずぐずと泣いて店の前から離れないオレを、ヒタは仕方なく店の中に入れてくれた。
営業中のバーと違って、昼間見るそこは閑散としていて静かで……埃と、ちょっとした汚れとか破損とかが見えてしまって、現実らしい雰囲気だ。
「 で?どうして探してるんだ?」
目の前に置かれた水を飲んで、ちょっと落ち着けるかな?と思ったけれども無理でした!
「ヒタさん これ見てぇぇ 」
ぐぃ とネクタイを緩めて、ワイシャツの襟を開くと、暢気に見ていたヒタの目が丸くなり、しげしげとそこを見詰めてきた。
「うわったくさん噛まれてる!」
噛み痕をそうやって見られるのは妙に気恥ずかしくて、近いヒタの顔を押しのけてそそくさと襟元を整える。
「とうとう噛まれちゃったんだ?」
「ん 」
「で、お相手は?」
「 ん」
「分かってたらここにいないって?」
「 ん」
口を開くとまた泣くか喚くかしそうで、唇を引き結んで何度も頷いた。
「一緒に消えた奴の名前とか知らない?」
「奴ら ね」
「……奴らの名前」
聞く前からわかっていた事だけれど、念のために聞いてみた。
「初めて見る顔だったから 」
ですよね。
知ってたらとっくに教えてくれてたよね。
「もうちょっと落ち着いて思い出してみたら?」
コップに残った水を覗き込んで、薄く映った色の悪い自分の顔をじぃっと見詰める。
正直、ここに酒を飲みに来た辺りから記憶がない。
次に記憶があるのは妙にスプリングのいいラブホのベッドの上で、シャワーを使ってる音で目が覚めて……頭痛いと思いながら体を起こして、隣に転がる男の背中を見た部分からだ。
「シャワー使ってた?」
「うん、バシャバシャ聞こえた」
「隣で人が寝てたの?」
「うん、いい体だった」
余裕な返事をしたせいか、ヒタは呆れた顔でオレを見て溜息を吐き、やれやれと片付けに戻ってしまった。
その背中に追いすがって引き留めるも、興味がないとでも言いたげなアルカイックスマイルでこちらを振り返られただけで、オレ何かした?
「ちょ、ちょちょちょ!待って!なんで!見放さないで!」
「呑気にしてるからだろ」
イラっとしたような声を出して、似合わない顎髭を引っ張ってから低く唸る。
「あんたまだ混乱したままなんでしょ!」
「何が?」
「水音がしたのに隣に人がいるとかおかしいでしょうが!」
口調のせいか、叱られた子供の気分になって身を小さく縮込めるが、ハタと気づいて血の気が下がった。
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