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ひざまずかせてキス
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しおりを挟む押し退ける前にのし掛かられてしまい、きっと相良を睨みつける。
「あームリムリ!ナオちゃんじゃ起きれないよ」
「なめるなっ っ くっそっ重っ!」
「あんたホント綺麗な顔してんね」
「はぁ?」
「派手じゃないんだけど整ってるって言うか、肌もすべすべだし、筋肉もキレーだし」
相良の手入れのされてないざらりとした手が、無遠慮に顔や体を撫で回す。
「な 何、や め 」
いつものヘラヘラした表情ではなく、じっとこちらを見つめる顔に、居心地の悪さを感じて首を背ける。
それでもオレを撫で回す手は止まらず、唇で指をとどめてその柔らかさを確認するように、何度も撫でてくる。
「お勉強で習った格闘技はできても、ケンカはやったことないっしょ?」
「な にを 」
「全然キズがない」
肌を優しく撫でてくるそれが慣れなくて、ムズムズと言うか……動悸がと言うか……
「は 離せ。帰るっ」
「門限があるわけじゃないんだろー?」
「お前と違って暇じゃないんだ」
「仕事?」
「そうだ」
「どこ行くの?」
力一杯押し返してみたが、相良の体は揺らがない。
「教えるわけないだろ」
「教えてくれたら、放してあ、げ、る!」
「うっっざ!」
思い切り溜を作ってそう吐き捨ててやると、流石にちょっと驚いた顔をして小さく笑った。
そうすると、出会った頃の大神の笑い方に似ていて、胸がくっと詰まる感じがする。
「教えてくれたら 会いに行くから」
「そのうち戻る」
「そう言うんじゃなくって……俺が会いたい」
この男は、真剣な顔して何を?
「 抱きに行く」
低く掠れた声が思いの外色っぽくて、至近距離で囁くように言われて心臓が跳ねた気がした。
体を撫でる手も、
粘液が出てくる口も、
苦手だったはずなのに、
────どうして、受け入れてしまったんだろう。
碌々眠れなかったのは、いい事じゃない。
相良を蹴り倒してあの汚いアパートから飛び出して……正直、データは返してもらえない、体は好き勝手されているなんて、詰んだこの状況を考えると睡眠なんてとっている場合じゃない。
相良が体を撫でまわしたのを黙認してしまったのは、情事後の疲れのせいだとしても相良に画像を持たれているのは気が気じゃなかった。
あの軽いノリで流出なんてされたら……
「 おい」
「っ はい!」
「道が違う」
そう言われて、一つ手前の角を曲がるんだったと思い出して、血の気の引く思いがした。
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