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ひざまずかせてキス
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しおりを挟むぐっと腹筋に力が入った。
意思ではどうにもできない体の動きが、嫌悪の為に嘔吐を促している。
「やめ っ」
圧し掛かる体から流れ出た汗が滴ってオレの皮膚に落ちると、ざわざわとそこから鳥肌が広がって気が遠くなりそうだった。
「 やめ なーい、 ぁ、すげぇ泣いてる 」
吐き気による生理的な涙を親指で拭い、こちらを見下ろす相良は満足そうだ。
屈辱で煮えたぎりそうな脳みそで相良への罵詈雑言を考えるが、食いしばった歯と押さえつけられて動けない体のせいか呻くのが精いっぱいだ。
「 さっい、あく だっ」
激しく揺らされていてはまともに言葉も紡げない。
「うるんだ目で睨まれるの、サイッコー っ!」
男らしい顔に射精を耐える為か小さく苦悶を浮かべて、満足そうに相良は呻いた。
何度目かの嘔吐の後、体の力が緩んだせいで意識も軽く飛んだらしい、はっと体を起こせば吐いた物は綺麗に片付けられていた。
「 へぇ、なおえ これ、下は本名?」
「なっ !?」
はっとそちらを見れば、オレのスーツに入っていた財布から免許を抜き取り、しげしげと眺めているところだった。
「人のっ勝手に何をっ!」
「おっと 」
普段使う場所とは筋肉が違うのか、下半身がぎしりと音を立てたせいでつんのめる。
「ナオちゃんのさぁお父さんって歴史好きなのー?」
「 っうるさい!!」
両親なんて朧な影でしか覚えていないのに、そんな事知っているはずがない。
立ち上がれないまま相良の手から免許を奪い返そうとするも、座ったままのはずの相良から取り返す事が出来ない。
「あと、この免許って俺のと違う?あー!ナオちゃん、アルファダッシュなんだ」
「大声でっ言うなっ!」
バース性持ちは身分証明書からして無性の人間の物とデザインが違う。オレが持っている物は勿論バース性の人間用で、当然そこには生年月日等と並んでαかβか、もしくはΩかが明記されている。
ダッシュがつくのは、β性だけれどα因子の強い人間の為の表現だ。
「え?なのになんで濡れないの?」
「濡れ ?それはオメガだろう?」
「あれ?オメガってテッペンじゃないの?」
「それはアルファだろ」
相良はきょとんとしてオレの顔をまじまじと見つめる。
バース性でない人間の認識なんてそんなもので、相良に至っては『α』『β』『Ω』の区別すらついてないように思う。こいつの事だから、アルファ なんてついているから、オレの事をαだと思っているのかもしれない。
「反対だ」
「でもナオちゃんのアソコちょー気持ちい っ!?」
腕を振り下ろすとごつんと鈍い音が響く。
手首を手刀で叩いたせいか、持っていた免許がパラリと床に落ちた。
「いったぁぁっ」
「感想とかどうでもいい!」
「入り口キツキツで奥トロトロで、イッた後はフワッフワ……感じてくるとひくひくして吸い込もうとするし、一番奥のぐぽって入るトコがメチャクチャ俺のツボで……」
恥ずかしさと怒りで言葉を出すよりも先に足が動いた。
うっとりと先程までの行為を反芻しているのか、しまりのない顔に足の裏をお見舞いしてやった!
「いたぁ ぃ!っと」
へらりとした顔面を蹴り付けた足を取られて、あっさりと体が回転した。先程までの行為のせいで足腰はガクガクとしてはいたが、あまりにも簡単にベッドの上に倒されて驚いた。
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