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狼の枷
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しおりを挟む行為を思い出すと腹の奥が焦れるような気がして、あかはぷるぷると首を振って思い出すのを止める。
「話はそれだけか?」
「 俺、これからどうなる んですか?」
瀬能が迎えに来ると言う事は十二分に分かっている。
けれどそれからどうなるのかはあかにはさっぱりだ。
「つかたる市にあるシェルターに行って貰う。そこで、お前の場合は身元を隠す為に新しい戸籍と、身を守る為にバース性の登録をする」
「それ から ?」
「身の振り方は自分で考えろ、シェルターの方でサポートしてくれるはずだ。就職にしろ何にしろつかたるならば補助が出る、悪いようにはならないだろう」
早い口調で一気に言うと、話は終わったとばかりに煙草を深く吸い込んだ。
「その後は ?」
「なんだ?」
「俺 一人?」
紫煙が揺れる。
「パートナーのマッチングも行っていたはずだ」
「それは 」
続けようと思った言葉が出ず、突き放すその言葉を理解しようとして唇を噛み締めた。
「いい相手が見つかるといいな」
「────っ」
ざわ と体に悪寒が走る。
こちらを見ない横顔を見上げて、訳の分からない震えに耐えるように拳を握った。
「ちが そんな 嫌だ!俺っ 俺は……そんな所に行きたくない」
「何を言っている」
静かに煙草を飲むその姿は、ガラスを隔てたような遠い世界のようで、どんな言葉を募っても届かないのだとあかに教えていた。
それでも、大神に会いたいと思った気持ちをなかった事にしたくなくて、あかは必死に理由を考える。
「 か、返せてない!働いて返すって お金、まだ、返してないし」
こんな職業の相手に、自分からその事を持ち出すなんて正気じゃないとあか自身分かってはいたけれど、言葉は止まらない。
「まだっ借金がっ」
「端金だと言った。もういい、気にするな」
イライラとした態度で煙草の灰を落とし、大神はソファーに腰を降ろした。
冷たく見上げられて、居心地悪く掌の汗を服で拭う。
「 駄目 っ あ 俺の、か からだ、で 払う、から」
発情期の間、大神はこの体で楽しめた事があったはずだ と、あかは恥ずかしさに悶えそうになりながらもそう告げた。
「女にも男にも、オメガにも不自由してはいない。お前より具合のいいオメガも大勢知っている」
それに価値がないと言われてしまい、あかは次の言葉を出す事が出来なかった。
あれ程、嫌だと言っていた母が取っていた行動と同じ事を提案してしまった悔しさと、それでも大神の傍にいたかったのにと言う気持ちが綯い交ぜになって、胸の内がぞわぞわと震えて行く。
「お前に提供できる物などない。素直につかたるに行け」
「 じゃあ、目とか、内臓?」
「そんな物いらん!」
「分かった、じゃあ体で稼いでくる」
腹の奥が気持ち悪さのせいでざわざわとして落ち着かない。
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