68 / 801
花はいっぱい
5
しおりを挟むちゅっ
頬に吸いつかれた感触に驚いて、喜蝶の手から逃げるタイミングを逃してしまった。
そのまま離れるかと思った唇が再び押しつけられて、柔らかい舌がペロリと頬を舐めた。
びっくりしているのに、舐められて身体中に広がる痺れに腰が抜けた。
「あ 」
ぽすんとベッドに倒れ込んでのしかかられると、体格差のせいでオレじゃ押し返せない。
「き、ちょ ナニ、いきなり、やめて」
ぐっと喜蝶の肩を押し返すも、そんなことで揺らぐほど喜蝶はやわじゃなかった。
すんすん と耳元で鼻が鳴らされ、それだけでゾクゾクと背筋がしなる。
「ああ、本当にヒートなんだな」
「なん なんで嘘言わなきゃいけないの」
喜蝶の牡の匂いだ。
押し倒されて、上から降ってくるこのフェロモンに、くらくらする。
「こうやらないと分からないくらいだけど」
笑いまじりのそれは、癖なのか嘲笑なのか。
煽られて熱くなった体が急に冷えて、でも言い返す言葉を見つけられないオレはのそのそとその下から這い出そうとした。
なのに、大好きな顔が間近に迫って動きを縫い付ける。
「これくらいだったら明日から学校来れるだろ?」
「 もう、届けも出してるから」
少し色の薄い目がガラスのようで、じぃっと見つめるのが好きだった。
光が溶けて、反射して、それに映る自分を見つけると、喜蝶がこちらを見てくれていることがわかって。
「また休み明けに一緒に行こうよ。それまで退屈だろうけど……」
「あいつはこうやって部屋に入れるのに?」
玄関の方でカタンと音がして、六華が帰ってきたのを知らせた。二人でベッドに転んでるだなんて、変な誤解を与えることになるから、とんとんとん と階段を上がってくる音を聞きながら、急いで喜蝶から距離を取ろうとした。
「なんで?あいつに見て貰えばいいだろ?」
「え……何言ってんだよ」
のしかかられて、服の下に手が滑り込んだ。
暑いと言っていたせいか、汗をかいた掌が腹から胸にかけて撫であげてくる。
「ぁ っ」
とっさに上がりそうになった声を、口を押さえてやり過ごすが、足音はもうソコまできていて時間がない。
後ろに転がるようにして喜蝶から距離をとるけれど、大きくて手足が長いせいか、そんなオレをやすやすと追いかけて捕まえてくる。
痛みに呻きながら喜蝶を足で蹴り、手で突っぱねてもびくともしない。
「だ ────っ」
きぃと小さな音がして扉が開いた。
「ほら!これでいいんだろう!」
息を荒げた六華から投げるように渡されたカフェオレを受け取って、喜蝶は涼しい顔をしているけれど、オレは顔があげられなくて……恥ずかしくて……
「薫?どうしたの?」
「なんでもないよ!なんでもない!」
手を振って見せて、ノートを写すフリをして俯いた。
耳がジンジンしてて、赤いのがバレてるかもしれなくて、唇をそっと噛んだ。
こうやって喜蝶は、気が向いた時……主にイライラしたり退屈だったり、後は振られてムシャクシャした時にオレに悪戯する。
気分転換にオレを揶揄うのが目的だから、軽く触ってくるだけだけど、喜蝶に触られるのが嬉しくて……
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


組長と俺の話
性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話
え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある?
( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい
1日1話かけたらいいな〜(他人事)
面白かったら、是非コメントをお願いします!

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる