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鳥の子
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しおりを挟む玄上がどれほどの人々に受け入れられていたのか、遺作展に訪れる人の数で推し量る。
そんな場所で、自分のような人間の作品を置いてもいいのかと不安になるのは俺の悪い癖なんだろう。
しかも……
馨子の個人的な慰めになればと渡した玄上の肖像画と共に目立つ位置に飾られてしまっては、今すぐこの場から逃げ出してしまいたい気持ちで息が苦しいほどだった。
「新山さん、この度はありがとうございます」
挨拶にきた馨子に丁寧なお辞儀をされて、緊張していた俺は無様に頭を下げる。
「お三方、蝶を描いてくださったのね」
「えぇ、あいつが好きなモチーフだったので」
泣き黒子の目元がふっと緩む。
「 きっと、喜んでいるわ」
微笑みさえ浮かべる彼女の中で、玄上はどう言った位置にあるのか……
投資先としてなのか、
愛情を注ぐ相手なのか、
これからの翠也との関係を考えた時に、ふと彼女の意見が聞きたくなる時がある。
「翠也くんとるりくんは?」
「あ……るりは向こうの椅子に。翠也くんは…… 」
姿を探そうとして言葉が消えた。
視線の先に翠也と、そしてその前に華やかながら上品な洋服に身を包んだ少女がいて……
なんとなくだったが、それが翠也の見合い相手だとわかった。
朗らかな笑顔に恥じらいを滲ませた少女は、平素ならば好感の持てる美しい少女だった。
「…………」
けれど、吐きたくなるほどの嫌悪を感じて胸に手を置く。
ぎこちなく翠也が笑顔を浮かべたことが許せなかった。
叶うなら間に割入り、あの華奢な少女の体を突き飛ばしたいとすら思う。
「 ────やはり、身勝手でしょうか?」
馨子の言葉にはっと思考を戻される。
「あ……いえ」
「今更、こちらでるりくんの面倒を見たいだなんて……」
肩を落とした馨子に、慌てながら会話を思い出す。
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願ってもない言葉に脈がどくりと大きく打った。
「るりくんの絵に……どうしてでしょうね? あの人を見た気がして……」
会場に並ぶ絵から比べると、拙いとしか言いようがないその絵を見て、けれど馨子は幸せそうに笑う。
「あの人の絵がわずかにでも続いているなら、私は力になりたい」
そうはっきりと言う馨子の中に、愛情を注ぐ相手としての玄上を見て熱くなった目頭を押さえた。
馨子からの有難い申し出については俺の方からるりに話すと約束すると、何度もお願いしますと告げて馨子は他の人々へと挨拶に向かう。
どうしようかと頭を悩ませていたが、これで肩の荷が下りると言うものだ。
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