とある画家と少年の譚

Kokonuca.

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埋火の欠片

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 細い腕ではたかが知れている力だったけれど……

 その確かさが胸を満たす。

「貴男のもののままで、いいんですね?」
「ああ」

 着物の裾を乱し、足を抱え上げる。
 出会った時と変わらない白い足と、赤く色づくその最奥。

「  は……ぁは  っ、く、くださ……」

 こみ上げる熱と期待でとろりと滲む目が強請る姿に、喉が鳴った。
 強請られるままに穿ち犯したかったけれど、さらに乱れる姿を見たいとも思う。

「まだ、駄目だ」

 無情な声に、翠也は震えるように首を振る。
 体を伏せさせ腰を掴んで引き寄せると、翠也は獣のような体勢と腰を突き出す羞恥に体を火照らせた。

「ぃ、や……っ」

 指で開いたそこに舌を這わす。

 いやいやと小さく訴える声を無視し、唾液を注ぐように丹念に皺の一枚一枚を解していく。
 拒絶を零していた口から艶のある声が漏れるのを確認して、限界にまで張り詰めたものをそこに押しつけた。
 唾液の滑りに誘われるように、先が襞へと沈み込んで行く。

「は……」

 息を吐いて射精感をやり過ごし、思うままに犯したい思いを押さえつけた。
 俺の律動に合わせて、噛み殺した喘ぎが上がる。
 
「声、聞かせて」

 引き結ばれた花のような唇に指を差し入れると、無理矢理抉じ開けられた隙間からかちりと歯の鳴る音が響く。

「だ、めっ……か、噛んで、しま……っ」

 戦慄く舌が俺の指を押し出そうとするのを逆に絡めて、更に奥へと押し入る。
 鼻から抜ける早い呼吸音を聞きながら、翠也のよがる部分を探して挿入を繰り返す。

「あ……っぅ」

 ぶるぶると臀部の肉が震え、俺を包んだ箇所が限界まで絞り上げてくる。

 挿し込む度に響く肌同士が当たる音と、粘りのある水音が重なって……

「あああぁっ!」

 堪え切れない声が上がるのと同時に、指に鈍い痛みが走った。





 ほとほとと涙を流しながら、翠也は俺の手を離そうとはしない。

「気にし過ぎだよ」
「いえっ……っ卯太朗さんの手なのに……」

 はっきりと歯型の入った人差し指は、微かに滲んだ血の色が鮮やかだった。
 どうしようと繰り返す翠也を落ち着かせるように抱き締め、「見ててごらん」と言って床に転がる筆を拾い上げる。

 色調版に残った緋色を掬い、情事でしっとりと湿っている翠也の肌に触れた。

「あっ」

 一際白い腕の内に、刹那の間に蝶が生まれる。

 ひらりと舞う姿に翠也の目が見開く。
 
 驚きで涙が止まったのを見計らい、畳みかけるようにその傍らに山茶花を一輪添えた。

「ほら、大丈夫だろう?」

 それでも不安そうな目に笑いかけ、梅の花を描き足す。
 
「んっ」
「次は何を描こうか?」
「い、いえ……っもう! わかりましたからっ」
「そう?」

 身を引こうとする彼をひっくり返し、真っ白な背に舌を這わせる。


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