とある画家と少年の譚

Kokonuca.

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葬儀

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「どうしたらいいのか……」

 水浴びか体を拭くことで済ませていたのだろう。
 自分の考え足らずさを反省しながら、華奢な体を抱き上げた。

 こんな状況だと言うのに、るりのかけ湯で濡れた肌は白大理石のようにしっとりとした透明感を見せ、首筋は羞恥に赤みが加わり匂い立つような色気を放つ。

「  ゃ…………」
「ゆっくり入れるから」

 足を浸けてやると、ぎゅっとしがみついてくる。
 
「熱いか?」
「んっ」

 頷くが、だからと言ってどうにかできるものでもない。
 ゆっくりと浴槽に沈めていくと、「熱……熱い……」と呻くようなるりの呟きが漏れてくる。

「湯あたりする前に言うんだぞ?」
「も、だめっ」
 
 やっと肩まで浸かったと言うのに、るりは落ち着かなそうに言って湯船から飛び出してしまった。

「早いな」
「だって、なんか……なんか、やだ」

 濡れそぼる仔猫のようにくたりとしたるりの体を頭を洗ってやると、自身の肌とは違う不思議な透明感のある肌が目に入る。

「相変わらず、綺麗な色だ」

 柔らかに朱を宿す背中に指を当てると、それがくすぐったかったのか大袈裟に声を上げて逃げて行く。

「はは。さぁ、もう一度、湯船に入って」
「ぅ……いや……」

 頑ななるりの態度に限界を感じて、しかたなく水分を拭きとって俺の服を着せた。

「間に合わせだ。今日はこれで我慢してくれ」
「卯太朗の?」

 明らかに大きな服を着たるりは、先程までのしおらしさはどこへ行ったのかと思えるほど嬉しそうにはしゃいでみせる。

「ここは、卯太朗の家?」

 風呂場から自室に連れて行くと、物珍しそうにぱたぱたと跳ねて辺りを見回す。

「部屋だ。今日はここで寝てくれ」
「卯太朗もいっしょだよね?」

 端に畳んで置いてあった布団へ向かいながら緩やかに首を振る。

 寄る辺としていた玄上を亡くし、まったく違う環境に連れて来られて不安な心境は十分過ぎる程理解できたが、それを受け入れることはできなかった。

「俺は話をしに行かないといけないから」

 縋るるりの手を剥がして背を向け、できる限り冷静な声で言い放つ。

「ちゃんと布団を敷いて寝るんだぞ」
「  うた、ろ……」

 心細げな声に振り返りたくなったが、奥歯を噛み締めて振り切る。
 何かを感じ取ったのか、るりはそれ以上何かを言ってくることはなかった。





「翠也くん」

 もう遅い時間だし、万が一寝てしまっていたらと思うといつものように戸を叩くことができず、小さな声で名前を呼ぶのが精いっぱいだった。

「あき  」

 静かに開けられた戸に言葉は途切れる。


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