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葬儀
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しおりを挟む「後できちんと説明に行くから」
そう言うと、翠也は迷いの断ち切れない表情のまま「はい」と返事を返してくれた。
苦味を噛み締めるような表情だ。
自室に戻って行くその横顔が胸に苦しくて、るりを置いて駆け寄りたい衝動を抑えるのが苦痛だった。
「 ……ごめん」
きつく掴んだ服を離しながら、やはり元の場所に戻ると言い出しそうな雰囲気でるりは項垂れる。
「いや、これは俺の問題だから」
つい硬くなった声音に怯えるように、るりはますます体を小さくさせてしまう。
「 っ、おれ」
「とにかく、まずは風呂に入らないと」
「え……あ、おれきたない?」
「いや」
汚いの部分がお互い同じものを指しているのかは分からなかったが、緩く首を振ってるりを風呂場へと連れて行く。
初めての場所と言うだけでなく、浴槽に溢れる湯を見てるりは驚いて俺の服を掴んだまま固まってしまった。
「葬式に出るのなら身だしなみは整えておかないと」
気後れして小さく萎むるりを浴槽の方に押しやると、おどおどと俺を見上げてその場から動こうとしない。
「ん?」
「……卯太朗、いっしょに入って?」
その強請る様は素なだけに手練手管よりも質が悪い。
「だ、だめか?」
「うん」
はっきりと断り、糠袋を持ってこなくてはと踵を返そうとした時、
「 卯太朗がおれんとここなかったのって、さっきの奴のせい?」
そうひやりとするような声が問いかけてきた。
「……いや」
視線を向けることをしないまま首を振る。
「俺のせいだ。さ、入るんだ」
「……」
一旦出ようとしたが、立ち尽くしたままのるりを怪訝に思って風呂場に戻る。
足元を見詰めたまま動かないるりの帯に手をかけ、着物を剥ぎ取ってもるりは特に抵抗しなかった。
「ほら」
身を剥かれても動かないその体を洗い場に押し、かけ湯をして浸かるように促す。
「入っていてくれ、糠袋を持ってくるから」
「…………」
返事をしないるりを置いて自室へと向かう途中、翠也の部屋の前で立ち止まってみたがわずかな物音も聞こえなかった。
「 るり、入らないのか?」
糠袋を持って風呂場に戻ると、先程と変わらない場所で立ち尽くしたるりがぽつんと所在無げにしている。
「……うん」
そう返されて困惑した。
「どうした?」
我儘を言う理由がわからないまま近づくと、るりの顔は湯気に当たっていたとしても赤すぎるぐらいの顔色だ。
「具合が悪かったか?」
「うぅん……おれ、こういう風呂、あんまり入らないから……」
立ち尽くしていたのではなく、恥じ入っていたのだと小さく首を振る姿に気づく。
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