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宍の襲
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しおりを挟む「 嬉しい」
「しがない絵描きだよ?」
潰しの利くような職ではないし、人に名前を告げても誰も知らないような、そんなただの絵描きだ。
「いいえっ離しません! 苦しくても、辛くても……卯太朗さんが僕のものだと言うのなら」
「君のものだ」
「僕の……」
「そう、他に目を遣ったりしないよ」
「誰も見ないでください」
懇願のように告げて、力を込めて抱き締めてくる。
それに応えるように抱き締め返してやっと、翠也が俺の腕の中に戻ってきたんだと実感が湧いた。
「あの、何か言葉を……いただけませんか?」
「うん?」
「気を悪くされたのでしたら……ただ、その 」
ねだることに羞恥を感じたのか、視線を逸らす翠也の肌が朱に犯されていく。
「夢ではないと、感じたくて」
「ああ。…………翠也」
精一杯の勇気で告げられた言葉に気の利いた言葉が浮かばず、沈黙が彼を失望させてしまうのではと気ばかり焦った。
結局、俺にできたのはただただありったけの思いを込めると言うことだけで……
「 ────あ、愛してる」
息を詰めて待っていたのか、ふぅと息を吐いた翠也の顔が歪んだ。
使い古された言葉だったからだろうか?
床での睦言に女へと囁いた言葉だからだろうか?
それとも、いい歳をして言い淀んだからだろうか?
「 っ」
笑われると覚悟していたのに、翠也は再び堰を切ったように泣き出した。
「 ぁっ……っ、うぅ……」
「な、何?」
「すみ、すみませ……っ」
言葉は形にならず、ただ嗚咽の狭間に吸い込まれて散り散りに消える。
泣き出した理由なんてわからない。
けれど、彼が悲しくて泣いているのではないと言うことだけは伝わってくるから、ほっと胸を撫で下ろす。
「翠也、愛してる」
もう一度囁き、全霊で以って華奢な体を抱き締めた。
「足、もっと開いて」
耳元で囁くと、首を振るも足は僅かに緩みを見せる。
「強情なのか、素直なのか」
「ちがぃ……ぅんっ」
堪える嬌声の艶やかさに腰が戦慄く。
うねる体に唇を落とし、体を押さえつけて穿つ。
「あっぃやっ」
そう言いながらも内はねっとりと俺の杭の形に張りつき、空気さえも間に入れぬように求め、締めつけて飲み込もうとする。
「は……熱っ、内がすごく……」
ぐり といい箇所を抉ってやると、きゅうと体をしならせて……
その心地よさは躍起になって彼を蹂躙していたあの時とは比べ物にならない快感となって、脳の細胞を一つ一つ撫でて犯して行く。
「ぅ、た……ぁっ」
翠也の更に奥を目指して腰を打ちつけると、ぐちゅぐちゅと粘つく水音とそれを追うように喘ぎが響いた。
自分が犯していると言うのに、淫らに絡みついてくるのを見ているとこちらが辱められている錯覚が沸き起こる。
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