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紅裙
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しおりを挟む「 ふぅ」
確かに、穏やかな心でいられたかと聞かれたら否と言うしかなかったが、だからと言って何かあるわけでもない。
「俺のことを信じていないのか」
呟いて、胸中の片隅にいるるりのことを思い出した。
「……まぁ、当然か」
苦い苦い嘲笑が漏れる。
翠也は愛しい。
なのにどうして、るりを好ましいと思うのか?
選べと言われたら迷うこともなく選ぶのは翠也に違いない。
これは揺らがない。
けれど、手放さないでおけるならるりも傍らに置きたいと、そう願ってしまう。
きっと、こんなことを思っているからどこかでその考えが漏れてしまっているんだと、嘲笑にもならない感情を押し殺した。
「 翠也くん」
待つのを止めて声をかける。
返事が返るかと様子を見ていたがことりとも音が立たないところを見ると、眠ってしまっているのかそれとも今日は会いたくないと言う意志の表示だろう。
「翠也くん、おやすみ」
これ以上待っても無駄だと思い、踵を返そうとした瞬間に引き戸が微かに開いた。
光が見えず、中は真っ暗だ。
「起こしてしまったかい?」
暗い部屋に立つ翠也の顔は俯いて見えない。
「翠也くん?」
手を伸ばそうとすると、すぃ……と中へと引っ込んでしまった。
誘い込まれているように感じて躊躇いながら中に入ると突然、どん と言う衝撃を食らってよろめいてしまう。
しがみついてきた翠也に何事かと問おうとした口に、彼が飛びついてくる。
「んっ!?」
がちん と鈍い音がして、骨に響くような痛みが歯から脳へと駆け上がってきた。
「あき、 んっ!?」
かけた声もぎこちなく動く小さな舌に絡め取られる。
勝手のわからないままに俺の体を弄り、懸命に気持ちを掻き立てようと手が肌を探す。
「……あ、きや?」
あまりの突然さに、接吻を止めさせようと頬に手をやると、冷たい水の感触が指先を濡らした。
そうか と理解し、押さえようとしていた手を止めて、彼がやりやすいようにと身を屈める。
飢えた鳥の雛のように繰り返し繰り返し啄んでくる度に、くちゅくちゅと濡れた音が響いてじわりと腰が熱くなるのが分かった。
なだれ込むように床に腰を下ろすと、俺に圧しかかって更に深く貪ろうと舌が奥に入り込む。
「 はぁ、っ……んぅ、っ……あっ……」
「んっ、あ、っ! ふ、ぁ……」
どちらのものかわからない唾液の捏ねられる音と、喘ぎ声が室内に垂れ流されて行く。
翠也の手が震えながら俺の下穿きを弄るが、うまくずらすことができずに指先が幾度も引っ掻くように彷徨う。
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