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紅裙
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しおりを挟む湯に当たって朱に染まっていく肌を舐める。
舌先を痺れさせる甘いそれは、目が回りそうなほどに脳を揺さぶった。
「湯あたりしてしまいます っ」
膝の上に乗った翠也はそう言って身を捩って逃げてしまう。
桧で作られた浴槽はそれが出来る程度には広く、ゆっくり浸かることができていいと思っていたこれが憎らしく思える。
「そうしたら、抱いて部屋まで行くよ」
追い詰めるように傍に行き、湯の中に見える白い足に手を置くと翠也は黙ったまま首を振った。
その頑なさは、突き崩してはいけないものだと感じて……
仕方なく傍で大人しくしていることにする。
「今日は、どちらにお出かけだったんですか?」
「 どこだと思う?」
逆に聞かれて翠也は戸惑ったようだった。
艶のある黒髪を緩やかに揺らしながら首を振ってわからないと示す。
拍子に額に貼りついたそれを払い、温まって赤みを増した唇にそっと触れる。
「僕の知っているところは、田城さんのところぐらいです」
花が綻ぶように微かに開いた唇に指先を挿し入れた。
「ん……っ」
歯列を割って中に踏み入ると、反射のように舌がねっとりと絡みつく。
指を舐めるのに応えるように、指を増やして弄ぶ。
すると、湯だけが原因でない熱で翠也の目元がぽっと紅く染まる。
「は……、ぅ……」
震えて翠也が喘ぐと、くち くち と唾液が指に絡んで粘ついた音が耳を掠めた。
揺れる水面の下で、明らかに形を変えたものが勃ち上がっているのが見える。
けれど、あえてそれには触れずに、水面からわずかに覗く胸の尖りに吸いつく。
「ぁ、んっ……ん」
そうすると、堪らないと言う風情で俺の顔を見詰めてくる。
甘い蜂蜜のようなとろりとした目を向ける姿の中に、我慢や湯あたり等と言っていた翠也はもういない。
俺の与える刺激だけを求めて、従順に追いかけてくる。
淫らに咲き誇るるりのものとは違う、固い蕾に隠された色気は秘された分いやらしくどこまでも淫靡だ。
尻を撫でて奥をくすぐるように触ると、雫を溜めた目が揺れる。
「ぅ……んっ、卯太朗さん……」
縋る声。
翠也の口から俺を求める言葉が聞きたくて、わざと「うん?」と続きを促す。
「ぁ、の 」
その意図を汲んだのか、翠也は戸惑いながら言葉を探しているようだった。
「 僕を ────……辱めてください」
時折飛び出す翠也の語彙の偏りにくらりとする時がある。
けれど、それが慣れぬ口調でたどたどしく呟かれれば、なんとも言えない愛おしさに変わった。
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