とある画家と少年の譚

Kokonuca.

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るり

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「養うのは簡単だ」

 暑いのか服を脱ぎ捨て、隆々とした肉体を晒しながら玄上は悟ったかのような雰囲気を見せて肩をすくめる。

「囲うならな? でも、考えてもみろよ」

 隠す理由がないとばかりに裸体で胡坐を組むと、崩れるのではとはらはらする勢いで壁に体を預けた。

「それで俺等の尊厳は保たれているか?」
「……そんな、一緒にするな」

 言い返しはしたが、声は酷く弱い。

「差なんかねぇよ」

 吐き捨てるような言葉はいつもの玄上の雰囲気からはかけ離れ、後援者に飼われるしかなかった自分自身を見詰めているかのようでもあった。

「……だが」
「それに、俺がいつまで世話を焼いてやれるとも限らんしな」

 そう言葉が出ると言うことは、るりのことは並木の未亡人には内緒なのだと言うことなんだろう。
 お抱えの画家……いや、情夫が与り知らぬところで男を囲っていたなんてのは、愉快な話ではないだろうから……

 そうなった時、切り捨てられるのはるりなのか、それとも玄上なのか。

 画家としての玄上を手放すのは馬鹿だと思うが、そこに男女の情が絡んでしまえばわからない。

 綱渡りなことをしているのだと非難しそうになったが、それがそのままそっくり自分に返ってくる言葉でもあるのだと思い至って唇を引き結ぶ。

 南川氏に、翠也とのことが露見したとしたら……?

 俺が失うのは後ろ盾と……翠也だ。

「卯太朗、難しい顔をするな。後ろ向きなところは治らんなぁ」

 馬鹿なことを言った と玄上は、ははと大きく笑ってから顎をしゃくった。

「るり、頼むわ」

 今度は何も答えず、薄い唇を引き結んだまま俺の服に手を伸ばす。

 恥ずかしいことに、先程までのるりの痴態でそこは変化の兆しを見せているため、思わず隠すように身を屈める。
 けれどこれでは自分の股間がどうなっているかを教えているようなもので……

 がっしりとした手に腕を取られてあっという間に畳に倒れ込んだ。

「わっ」
「るり、剥いてしまえ」

 俺と玄上では腕の太さが段違いだ。

 懸命に腕を振るうもびくともせず、逆に引っ張り上げられて玄上に羽交い絞めにされてしまう。
 がむしゃらに蹴り上げようとした脚も押さえ込まれてしまえば、もう俺に抵抗する隙は一切ない。

 翠也のものとはまた違う細さを持った指が、下穿きから硬さを持つそれを引きずり出す。

「や  洒落にならないか  ──っ」

 ちゅう っと先端に吸い付かれて言葉が途絶える。

 猫が乳を舐めるように丁寧に根元から先端へ、そして唾液をまぶしながら柔らかな先をなんの躊躇もなく咥内に含む。

 るりは猫のようにこちらを見上げると、舌になぞられて硬くなった俺自身を嘲笑うように眉を上げた。

 
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